フェアリ*ティル | ナノ


て と て


" The air of the morning is clean. "



「…ティタの次はモードレッドか」
「うーん…特に湖に何かあったと言う事は聞いてはいませんから、原因は何なのかはよく分からないですね」


そうか、と俺はのんびりと返事を返した。血相を変えて飛んできたティタは、なんとか宥めた後「朝食作ってくる」と部屋を出て行った。昨日寝る前にフェイに声を掛けておいたから、こうして部屋に来てくれているのだが、開口一番「…か、可愛い」とティタと同じようなことをのたもうた。本人が聞いていたら、さぞかし不機嫌になることだろう。


「ラーンスロット、窓開けていいか」
「ああ、構わない」


窓を開けると同時に、何故かエレナが飛び込んできた。頬を高潮させて、口をパクパクとさせている。妖精の声が聞こえないのは致し方ないことなので、途中でフェイと会話を交代した。あの剣幕だと、もしかすると元に戻ったティタを見て興奮しているのかもしれない。


「あ、ちょっと待ってね。エレナ。―ニムエ、何ですか?」
「『今、ティタとご飯作ってる。エレナ、そっちに行った?』」
「ええ、来ました」
「『アーサーが知らないなら、教えてあげなくちゃって、行っただけだから』」
「そうですか、有難う。アーサー様にも伝えますね」


フェイから簡単に話を聞いて頷く。エレナはさて、どんな気分だろう。でも大きかろうと小さかろうと、いつもと変わりないようだったので、あまり気にしていないのかもしれない。


「…ラーンスロット…か…」
「ん?モードレッド、起きたのか?無理しなくていいぞ」
「?…私の事は覚えているのか?」
「君の事は妖精たちから知識として教えられている」
「俺はアーサーだけど、分かるか?」
「アーサー?…アーサー…」


俺の事は分からないらしく、ベッドから体を起こして腕を組んで考え込んでいた。そして、小さく「あ」と呟いたのが聞こえた。


「…クラレントは…そうか、湖か?」
「どうした?」
「いや。…昔の僕と今の僕と、記憶が混在してる…アーサー、その、なんで僕は小さくなってるんだ?」
「それは俺が聞きたい」


眉間に手を当て、ポツリと呟いた。そのまま昨日の事を続けたが、聞いているとただ単に小さくなったティタをあやしていたらそのまま寝こけたと言うところらしい。ラーンスロットが、モードレッドに動けるかどうかを聞いている。こくりと素直に頷いて、「変な感じだ」と苦笑していた。ベッドから降りて、ゆっくり腕を回している。


「…騎士である分だけ、魔法などの耐性があるのかな」
「さあな。そこまでは妖精たちに聞いてみないとわからんだろう」
「よし、二人とも。朝稽古いくか」

「「…え?」」


*


かーん、と木のぶつかる音がしてころころと木刀が転がっていった。昨日はティタで、今日はモー君が小さくなっているとは、なんだか不思議な光景だ。それでもアーサーやラーンスロットと打ち合いをして、渡り合っているのだから末恐ろしい。遠くから手を振って歩いてくる女の子二人の姿が見えて、私も手を振った。


「お待たせー…あ、ガレス!おはよ」
「おはようティタ。ふふふ、あーあ、元に戻っちゃったね」
「…うっ、ニ、ニムエから大まかに聞いた…ちっちゃい私、変な事してなかった?」


困ったような顔をして微笑んでいるティタに、私は首を振った。素直でかわいいちっちゃな子と触れ合う機会はなかなかないので、新鮮だった。それにしても今日も大きいバスケットを持っている。ニムエと一つずつだ。サンドイッチやポテトフライ、ミニオムレツ、カットフルーツやらたくさんおかずが入っている。


「おー、豪勢だな朝から」
「おはよ、ウィル」
「おうおう、ははは!」


昨日のことを思い出しているのか、タオルで汗を拭きながらやってきたウィルはティタに笑顔を向けていた。反対にティタは小さくなっている。


「ま、どこまでもティタはティタなんだなということは良ーく分かった」
「え」
「ああ、そうだね。動いてないと気が済まないっていうのかな?」


私たちの言葉に、「それはそうかも」と恥ずかしそうに俯いている。落ちた木刀を広い、モー君やアーサーたちもこちらへやって来た。


よく朝稽古に使う公園は、早朝だからか私たち以外に人はいない。ニムエも小皿やフォークを取り出して、それぞれに渡している。

走って来たモー君は、真っ直ぐにティタの所へ行った。一体何が始まるのかと、皆が固唾を飲んで見守る。けれども先に言葉を発したのはティタの方で、小さいモー君を引き寄せてぎゅっと抱きしめていた。


「駄目だよ、無茶するなんて。モードレッドだから、小さくても強いんだろうけど」
「え?あ、ああ…」
「ああ、ティタ。大丈夫だ、そいつ、中身は変わってないから」
「…え。え?どういうこと?」


ウィルが意地悪そうににやりと笑う。その近くで頬をほんのりと染めて咳払いをひとつしたモー君は「ごめん」とティタに一言だけ言った。きょとんとティタはぱっと体を離した。「よ、良かった…のかなぁ」と聞こえたが、そんな風にぼやいてしまうのも確かに分からなくもない。


「美少年は何でもありだね?モー君」
「な、何言ってるんだ、ガレス」
「…いや、なんか違わね?」
「わ、私は全部ちっちゃかったらしいのにな…いいな」
「おいおい、ティタ、そこか」
「あれ、皆、食べない?」
「いやいや、食べるよ。ニムエ、ありがとな。頂きます」


こういう時の音頭を取るのはやはりアーサーだった。皆もそれぞれ、サンドイッチなどを取り分けたりし始めて、静かな公園での時間がゆっくりと過ぎていく。


"てとて"
Thanks title / reset∞


 ( 朝の空気は、綺麗です )
title / By myself.


The air of the morning is clean.


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