来るのではなかったと、なまえは開始早々後悔を始める。
 球技大会が終わって、クラスの打ち上げに参加したはいいものの、なまえは居心地の悪さを感じていた。席をくじ引きで決めるなどだからいやだと言ったのに。仲の良い友達は離れて、離したこともあまりない男子に挟まれている。おまけに彼らは人の上で興奮覚めやらず、先ほどの試合の話をしている。

(泣きたい…)

 ソフトドリンクだっておかわりに行けやしない。がじがじストローを齧りながら、なまえは紙ナプキンを無造作に取った。暇をもて余し、器用に折ってゆく。渾身の出来と思われるバレリーナが完成した。以前友達が折っていたのを教えてもらったのだ。我ながら上手い、と自画自賛して頷くと、正面から視線を感じる。

「ぶっは!!!なにそれ、なにそれ!すごくね!?」

 やたらとテンションの高い高尾くんがきらきらと目を輝かせながら、壊れ物を扱うように、手に取った。

「ちょっとこれ写メっていい?てゆうか、ツイッターにアップしていい??」
「え、い、いいけど……」

 彼のノリについていけず、されるがままになる。被写体は紙ナプキンのバレリーナだけでなく、なまえもらしい。バレリーナを手に持たされて、角度まで厳しくチェック、おまけに笑顔でピースの注文。
 これだけ派手に高尾が騒げば、周りの男子も自然会話にのってくるというもので。男共は囃し立てたり、一緒になってピースしたり。なまえはなんだか気恥ずかしいが、先ほどよりはずっと楽しくなっている。

「あ、なまえちゃん飲み物なくなってるじゃん。持ってきてあげるよ、何がいい?」
「じゃあ…ファンタグレープ……」
「任せといて!」
「高尾〜、俺のも」
「野郎はお断り。自分で行けっつーの」
「んだよ、ケチくせぇ」
「人事を尽くすのだよ」
「おまっ……それ緑間の真似かよ。似てね〜!」

 どっと笑いが起きる。その様子に、隣のテーブル席までなんだなんだと顔を出してきて、笑いの渦が広がっていく。
 その中で、高尾くんと目が合った。にっこりと微笑まれる。














(130108)
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