01
【Providence of a certain life―ある生命の摂理―】
The pretty flower says nothing beautifully.
What an admirable thing of making it dignified, and standing still there.
There is merely the flower there, and the trees and plants rise calmly.
Even if anything is done, as for them,
it does not need to express for dissatisfaction to grieve. However, the underlying anger piles up.
Oh, a flower is stamped again.
――――――――――――――
リゴット岳の麓。ギルクォードの町よりも北に位置するその町は、フォルダムと名付けられている。
赤煉瓦の家が立ち並び、綺麗に整頓された石畳は、花の絵になるよう、色合いが計算されて敷かれていた。
魔物による襲撃は多かったが、魔物ハンターの巡回地ということもあり、それ程大きな被害はない町だった。
水無月の鷺草の日。
そのフォルダムに、魔物ハンター達は訪れていた。革の靴が、地面に這うように伸びた蔓を踏み付ける。
鷲鼻で黒い髪をした男が、険しい顔をしていた。
「ノーマン分隊長、これは……」
ラインズが言いかけた言葉に、ノーマンは顎を引く。
「ああ、魔物に違いない」
彼らの眼前に広がる光景は、文字通り緑に覆われたフォルダムの町が広がっていた。
石畳や家々を、夥しい草が覆い茂り、蔓が這い、至る所に花が咲き乱れている。
色取り取りの花はとても美しく、これが只の草原であったなら、思わず溜息が出ただろう。
先日、巡視に訪れ、周囲に魔物の巣や気配が無いことを確認し、また七日後に訪れることを約束した彼らは、
この変わり様に顔を歪めることしか出来なかった。その中でも、分隊を率いることを任されていたノーマンは、すぐに次の行動を考える。
部下を更に二名ずつの班に分けて、町の探索に向かわせた。町の被害状況や生存者の確認、
そして魔物の気配、その痕跡を探らせる為だ。ラインズも他の隊員と共に、周囲の探索を行った。
用心の為にライフルを構えながら、地を這う蔓や小さな花を踏み付けながら、フォルダムを歩いていく。
「フライン、この辺りに、生存者はいないみたいだ」
「ああ。どこもかしこも、花だらけだ……」
ラインズの言葉に頷いていたフラインが、途中で口を閉じた。
大きな蔓の塊に近付いて、妙な形に絡まった蔓を見つめる。そして、手を伸ばして少しずつ千切りながら解いていくと、
中から籠が出てきた。中には、果実が詰まっていた。そして、視線を向けた先には、何かに巻き付いた蔓の塊がある。
ラインズが率先し、その夥しい程の蔓を引き剥がしていくと、肌色の皮膚が見えてきた。
息を呑みながら、蔓を引き千切っていったその奥に、目を閉じた一人の女が治まっていた。
腕や首、髪にまで蔓が絡みついている。それを見て息を呑み、
「人が……女性がいる!」
ラインズがそう叫ぶと、フラインが駆け寄ってきた。
場所を開けたラインズの代わりに、フラインは手を伸ばし、女性の首に触れる。
弱々しくはあったが、微かに脈を感じた。彼女はまだ生きていた。
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