01


【The depths of a man―ある男の深層―】
You can't see anything.
In the dark I can't hear anything.
Just saw a ray of light. He unconsciously reaching for intense light.
Took out in the cold. Smile she gave me 引ki摺ri出shite out of the darkness,
but even now he motivates.
He sounded on her lips.
"Come on, kill him!"
                         ――――――――――

「焦らず、こちらに続いてください!」

 声を張り上げるハンターに混じって、子供の泣き声がする。親と逸れたらしく、親を探す声が響く。
 大きな声や音は、魔物を呼び寄せてしまう。
 しかし、今は裏門を含めて、至る所で戦闘の音がするので、何処もそう大差無いのだろう。
 襲ってくる敵だけを斬り捨てながら、ディックはその場にいた。周囲には、濃い色を纏う魔力結晶が転がっている。
 その価値を知る者であれば宝の山ではあったが、あいにくとディックには興味のない物だった。

 ざわり。

「……」

 ディックは、胸の奥で何かがざわめくのを感じた。
 喧騒の中で、少女の泣き声が耳に纏わり付いてくる。その泣き声がやけに五月蝿く思えた。
 涙で濡れた丸い瞳が、脳裏を掠める。ディックは苛々した様子で唇を噛み締めると、上空からの魔物に斬りかかった。

『    』

 少女の最期の言葉と、血の海に沈むその姿が蘇る。過去の記憶を消すように、何度も斬り捨てる。
 そのたびに、抜け落ちた魔力結晶が、地面を転がっていった。それでも、幾ら斬っても魔物の数は減らない。
 何処からか、激しい銃撃戦の音が聞こえてくる。

 ポツ……と、雫が落ちてきた。ディックが見上げれば、広がっていた雨雲から、少しずつ雨が落ちてくる。
 地を汚していた魔物の血と塵を、洗い流していく。ディックは疲労した素振りも見せず、
 ただ、機械的に、襲い来る魔物を斬り続けた。

 しかし、数が多い。ディックは周囲に目を走らせる。人民の避難は済み始めていたが、
 魔物を駆除する為、そこらに魔物ハンターが集まり始めていた。
 迂闊に、魔剣の魔法を使えないどころか、こちらに近付いて来られても困る。

「……」

 そのハンター達の中に、以前攻撃を仕掛けてきた者が、いないとも限らない。
 ディックは魔剣を鞘に仕舞うと、彼らがこちらに注意を向ける前に、その場から離れた。

 水溜まりを蹴飛ばしながら進んでいると、「まってぇ!」とよく知る声で呼ばれた。
 足を止めれば、ティナがこちらに手を振っている。魔物ハンターに貸し与えられたのか、
 灰色のローブを纏っていた。フードを被っている辺り、天露を凌ぐ為に渡されたのかもしれない。

「リアトリスとは、会えたのか?」

 そう尋ねると、ティナはこっくりと頷いた。しかし、何処か不満そうだ。

「でも、リア、きて、くれなかった、ですの。
いま、あしでまとい、なる、そう、いって、こなかった、ですの」

 どうやら、リアトリスは満足に動けない程の手傷を負っているらしい。

「そうか」

 それなら、そのうち戻ってくるだろう。
 ディックは周囲を見渡して、魔物ハンターの姿が無いか確認する。それから、ティナを見た。

「それなら、混乱している今のうちに、ギルクォードに戻ろう」

 歩き出そうとしたディックは、その手をティナに引っ張られた。
 思いの外強い力で、ディックはその場でよろめいてしまう。煩わしそうにティナを見れば、
 彼女は澄んだ紫色の瞳で、じっとこちらを見上げている。

「なんだ」

 見下ろした状態で問いかければ、ティナは小さな唇を開いた。

「アストワース、いま、たいへん、ですの」
「……」

 ティナが、小首を傾げながら続けた。

「たすけない、ですの?」
「……」

 銃弾が放たれる音や、魔物の咆哮が聞こえてくる。今、アストワースにいる魔物ハンターが、
 総出で駆除に当たっていた。誰かが「補充を急げ!」と叫んでいる。
 ディックは左目を閉じた。それから、再び瞼を開ける。

「……なんで、助ける必要があるの」

 暗い声が響く。少女を食い殺そうとした魔物から、彼女を守った。しかし、彼女の命と引き換えに、
 アレクシアは命を落としてしまった。頭上から降り注ぐ怒声や罵倒の言葉が、まるで不協和音のように頭に響く。
 それが、とても五月蝿く感じた。

「此処は、魔物ハンターが大勢いるし、支部がある町なんだ。
わざわざ俺が手を出す必要もないだろ」

 ふと何者かの気配を感じて、顔を動かせば、牡牛程の狼が町を駈けている。
 その口には、小さな子供を咥えていた。子供はぐったりとしており、身動き一つしない。
 既に事切れているのだろう。額の目玉は潰れていたが、残りの目玉はギラギラとさせている。



[ 49/110 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -