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【A man's Retrospective―ある青年の回顧―】

No longer that person. I am broke.
Death of me, she said. The word is denied me so far.
Hope she and killed me. So now I'm her. In her presence, I exist.
Be there for there, beside her.
Want to love her turn to make sure the side of her.
If you love me, I'm no more nothing.
                       ―――――――――

 ディックはその日、ギルクォード近隣の村にいた。その村から、毒性の魔物退治の依頼が来ており、
 リアトリスとともに訪れていたのだ。本来、魔物退治というものは魔物ハンターとして、
 正式に活動している者が受ける仕事である。しかし、その職業柄、魔物ハンター自身も常に命を落とす危険性があることから、
 一人雇うだけでも、特に貧しく小さな村や町にとって、高額な料金になる。

 その為、ディックのように、ずっと安い値段で、魔物を退治してくれる者に、依頼することが多かった。
 そして、そのことは魔物ハンターもまた、黙認している。

「実際、一般人と比べれば魔物ハンターの数は少ねえ。魔物ハンターだけで、全ての人を救えるかってなると、正直無理だ。
それに、リスクの高い魔物退治に、数少ねえ魔物ハンターを向かわせるのも、大損失になる場合だってある。
おいらのいた部隊みたいにな。だから、全部自己責任で背負ってくれる、魔物退治を生業としてる、
所謂稼ぎ屋みたいな連中は、正式なハンター達にとっても、ある意味有難い存在なんだってさ」

 いつの日か。ディックはそう聞いたことがある。

「そういう連中の話は、成功しても失敗しても、結構魔物ハンターのお偉いさん達の耳に入ることもあるらしいんだ。
成功すればそれで問題ないし、失敗しても、それだけでどんな魔物だったのか、どういう性質で、どういう攻撃手段を持ってるのか。
自警団から報告があるらしい。それに、正式に身を置いているわけじゃねえ、連中なら……」

 死んでも構わない。
 リアトリスの顰めっ面を思い出しながら、ディックは歩いていた。
 只の人間が、何処からか武器を調達し、それで生計を立てていることもある。勿論、その腕前といえば、
 リアトリスのように正式に所属していた者と比べれば、随分とお粗末なものだろう。大概が、
 住んでいた場所を焼き払われ、踏み躙られて逃げてきた者ばかりなのだ。他所の町村でも、
 今いる人数だけで精一杯の場合は、受け入れてもらえないこともザラにある。住む場所も家族も失い、
 どうしようもなくなり、追い詰められた人間が、魔物と戦う道を選ぶこともある。

 しかし、武器を手にした時点で、魔物ハンターの加護から外れてしまう。
 武器があるなら、それで己の身を守れると、認識されてしまう為であった。

 そうした事態や問題性は、王政でも取り上げられているらしいが、今日に至るまで。
 何の打開策も生まれていないようだった。元々王族や貴族といったものは、今も昔も、
 対して庶民の生活を、本気で改善しようとしていない。少なくとも、ディックはそのように捉えている。

 そんなことを言っていたリアトリスは、今は前方で、時々しゃがみ込んでは、
 草花を摘んでいる。しゃがむ度に、彼が腰にぶら下げる、半面防毒面マスクが音を立てた。
 普段、リアトリスはこの道具を持ち歩くことは少ないらしい。毒を使う魔物や、魔将など強い魔力を持つと思われる、
 魔物退治に赴く時だけ、持っていく。必要なものを必要な時に持っていく。あまり、あれこれと持ち歩くと、
 その分重くなり、俊敏に動けなくなるからだそうだ。

 肘当て、膝当て、胸当てといった簡単な鎧と、首を保護する青銅製の防具。ライフルと拳銃、弾丸、爆薬、毒薬。
 医療用の薬。縄。他にも、様々な武器や道具を持っており、確かにリアトリスは、依頼に合わせて道具を選別していた。

「やっぱり、この時期はいいや」

 立ち上がるリアトリスに近付いて、ディックがその手元を見た。根っこまで丁寧に取った草花が、
 たくさん抱えられている。彼は最近になって、ようやくシェリーを信用していた。いや、信用というと語弊になる。
 先月、アストワースにディックと向かった際。彼女がギルクォードに対して、何もしていなかったのを見た彼は、今回。
 ギルクォードにティナとシェリーだけを残し、一緒にやってきた。
 けれども、完全に警戒を解いていないわけではないらしい。出掛ける前に、何度もティナに向かって、

「あいつが何か怪しい動きしていたら、帰ってきたらすぐ言えよ」

 と、何度も何度も言っていたのを、ディックは見ていた。

「ル・コートに備えるもの?」

 リアトリスは一ヶ月に一度は、必ず墓参りに訪れていた。
 しかし、ディックの問いかけに、リアトリスは首を横に振る。

「これは、おいらが使うもんだ。魔物の毒を緩和させたり、魔物に対して使ったりする、薬を作るんだ」
「へえ。そういうの出来るんだ」
「魔物ハンターだった時、最初に覚えさせられたからな。魔物に効く毒の作り方とか、逆に解毒薬とか……」

 そこで、リアトリスが言葉を止めた。既にディックは、空の一点を見上げている。
 酷く重たい魔力が、近付いてくる。二人揃って空を見上げていると大きな黒い翼を持った魔物が、
 凄まじい勢いで、こちらに向かって下降してくるのが見えた。明らかな敵意と殺意に、ディックは魔剣を引き抜いた。



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