01


【A woman bound―ある女の束縛―】
Come down in the same place.
If you think that I need. If and I loves so dearly.
Till I come down. You never give up. You let in anywhere.
You never let.
Don't want to lose you, I to you mark.
You can lie low brow's affection, distortion, and others don't.
I love you.

So come down to "are you same as me.

                         ―――――

 ラストはいなくなった。地中深くに、魔王と呼ばれる男の手で、封じ込められたのだ。
 けれども、男もまた無事では済まなかった。ラストからの攻撃は、彼の寿命を縮めてしまったのだ。
 その男は、己の命が短いことを悟り、魔力を使って自分を石化させ、自身が封印の鍵となる形で、
 ラストという魔将を封じたのだ。

 もう、魔王だったその男が、蘇ることはない。

「……」

 シェリーは、ふぅっと息を吐く。

 吐息は冷たい空気に触れると、白く染まり、霧散した。彼女の透き通る様な白い肌は、
 深海のような青い目や、血潮のように赤い唇や、濡れ羽色の艶やかな髪を、より鮮明に際立たせた。
 深く降り積もった雪の中を、シェリーは静かに歩き続ける。その中に生まれた轍を、
 振り続ける雪が覆い隠していく。

 とても、静かな夜だった。

 魔王と呼ばれた男と、ラストの決着を見届けたシェリーは、ひっそりとその跡地を去った。
 悲しいという気持ちが、生まれることは無かった。魔物である以上、弱ければ淘汰されるのが、
 自然の摂理だ。魔王も、それは例外ではない。彼が命を落としたのは、ラストを捩じ伏せるだけの力を、持っていなかったからに過ぎない。 
 
 薄情だと思ったが、それが自分なので仕方がないと、そう言い聞かせる自分もいる。
 しかし、魔王だった男の声がもう聞けないという事実は、シェリーに「寂しい」という感情を、
 呼び起こすとまではいかなかったが、ほんの少し。拍子抜けではあった。

 虫も鳥も、獣も全てが寝静まるその時間は、とても静かな夜だ。
 音の無い、雪原を一人で歩くシェリーは、久しぶりに孤独を感じた。

 生まれつき、強大な魔力を持っていた為、その強すぎる魔力によって、親を殺してしまった。
 そのことを悔やむことも、悲しむこともシェリーは無かった。只、残された魔力結晶を吸収し、更に力を得たくらいだ。
 その魔王と呼ばれた男は、寂しい目をした男だった。

「強過ぎた力の所為で、一人ぼっちになってしまった」

 その男は一度だけ、シェリーにそう零したことがある。彼もまた、生まれつき強い魔力を持っており、
 その力で親を殺してしまったらしい。その力を恐れ、弱い魔物は誰も近付いて来なかった。
 光に群がる虫のようにやってくるのは、強大な力を持つ者を盾にしようとする、そんな者ばかりであった。
 誰も、その男を見ておらず、その男の力だけを求めて擦り寄ってきた。そのことに気付いた時、
 彼は空虚で深い絶望に襲われたという。

 自分でなければいけない。そんなわけではない。力が強ければ誰でも良いのだと、そう言う彼は、
 深い孤独をその目に湛えていた。理解されることも、他人を理解することも諦めた顔は、
 その寂しそうな目を、更に一層寂しく見させた。

 元来、彼はよほど魔物とは思えない程、感受性の強い魔物だったのだろうと、シェリーは思う。

 自分達は似ていると、その男は寂しく笑った。
 そして、魔王となるに相応しかったその男は、シェリーに望みもしなかった手を、差し伸べてきた。
 誰かとつるむ必要性も、一緒にいる理由も、シェリーにはくだらないことのように思えていたが、
 いつの間にか彼の隣にいるようになった。二人の間には、愛情と呼ぶものはなかったように思えた。
 そこにあったのは、同情や憐憫であり、互いに傷を舐め合うようなものだったのだ。

 只、互いに強い孤独と虚しさを抱えて生きていた。魔王と崇拝された男の言う通り、
 似た者同士だった二人は、誰よりも相手を理解し、互いを受け入れることが出来たのだ。
 シェリーは彼と過ごすうちに、「ああ、孤独だったんだな」と初めて知った。失って初めて、
 手の届く所にいた彼が、その孤独を癒してくれていたことを知った。

 そして――

 それから、数十年の月日が流れた後。孤独だった頃の感覚を、取り戻りつつあった冬の日。
 シェリーの鼻腔を、夥しい量の血の匂いが掠めた。それは、人間のものだ。シェリーは顔を上げる。
 この先から漂ってくる、その血の量から察するに、恐らく魔物に襲われたのだろうと、目星を付けた。

――しかし、なんだ。

 その血の匂いに混じって、今まで感じたこともない魔力を感じた。強くなったり、弱くなったり、
 ムラのある魔力だった。なんとなく、その魔力のことが気になって、シェリーは村へ足を進めることにした。



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