Story5
ある青年の記憶より。
いつからそうしていたのか。それまで、どうしていたのか。彼には記憶が無かった。
彼が覚えていることは、無惨に殺された女の姿。そして、女をそんな風にした男達の姿。
呆然自失となっていた彼は、死体の沈む血の海の中、一人座り込んでいた
いっそ、このまま果ててしまおうか。そう思った彼を救い出したのは、一人の女だった。
けれども、彼女が手を引いて導いてくれたのは、本当に救いの世界だったのだろうか。
それでも、彼がそれを救いだと信じるのならば、紛れもなく救いだったのだろう。
例えそれが、新たな闇へと誘う手だったとしても。
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