Story15
ある青年の事情より
彼は自分を偽っていました。それは、人の社会で生きていく為に、どうしても必要なことだったからです。
人は異質な物を嫌います。少しでも異なることがあれば、急激に団結して、その異物を糾弾するのです。
彼は、他の人より少し丈夫でした。怪我をしても、すぐに治せたのです。しかし、彼の母はそれを押し隠しました。
彼は、人よりも時間の進み方が遅かったのですが、母はそれを隠しました。
彼は、他の人と違って、不思議な力を扱えました。そのことを、母は生涯を通じて隠そうとしていました。
大きな犠牲の上で、人と相容れないことを知った彼は、自分を偽ることで、平穏を手にしました。
しかし……。
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