Story9
ある青年の思い出より
いつも一人でいたその少年に、声を掛けたのはその村の子供だった。
親分肌の少年がいた。いつも勝気で喧嘩っ早い、お調子者の少年だった。
明るい少女がいた。あどけない笑顔で、明るく逞しく生きる少女だった。
気弱な少年がいた。臆病過ぎる嫌いはあるが、心根の優しい少年であった。
半ば強引に仲間に加えられたが、それは初めて出来た友達だった。
初めて楽しいと思えた。母を心配させないように、母に迷惑をかけないようにと、
ずっと押し殺していた心を解放するのに、時間は掛からなかった。
けれども――
少年はその全てを、自らの手で破壊してしまったのだ。
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