01


【A man's hate―ある青年の憎悪―】
I'll kill. It was a curse and towards others.
Obvious hostility towards the man, Dark hate. Grisly murder.
Black words full of the curse that undermined his mind quickly.
Those eyes that seemed all hating.
Become a murderous increase the pain, without sorrow,
without knowing the limits, black power, overflowing from him.
Groans out eyes red, people around.
It was not for the cold winter nights.
                    ――――――――

 リアトリスはグラニットと一緒に、市場へと来ていた。商隊がまた食材を持って、やって来ている。
 今回はディックがいないので、イェーガーも一緒にいた。食材を物色していると、
 すっかり顔馴染みとなった商隊の男が、

「よっ、リア坊」

 と、リアトリスに声を掛けてくる。

「おう、ダリオのおっちゃん」
「元気そうだな、リア坊」

 灰色の髪のその男は、陽に焼けた浅黒い頬を、指で掻いて笑う。
 商隊の隊長を努め、魔物ハンターとルートを確認の話したり、直接依頼をしたり、
 そういう面倒な仕事を全て引き受けている。他の隊員達は、荷車から木箱を下ろして、
 市場として広げる仕事を担っているのだ。

「今日は、ディックはいないのか?」

 探すように、周辺を見渡すダリオに、リアトリスは面白く無さそうに言う。

「ディックは仕事だよ。おいら抜きだ」

 憮然とした顔のリアトリスの頭を、ダリオがぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。

「むくれるな、むくれるな」
「子供扱いすんなっての」

 その手を払い除けるリアトリスに、ダリオは顎鬚を撫でながら尋ねてきた。

「で、ディックはどこまで行ったんだ」
「オレアンって所。そこから、依頼が来たんだって。なんか危ねぇらしくて、オボロのおっちゃん、
おいらには言わなかったんだ。おいらだって、何度も強ぇ魔物と戦ってるってのにさ」

 リアトリスがそう言うと、ダリオは怪訝そうな顔をする。思案するように虚空を睨みながら、

「オレアンなら、もう崩壊した筈だぞ」

 そう言った。今度は、リアトリスが「はあ?」という顔をする。

「いつだよ」
「三週間、いやひと月ちょっと前かな。いつも世話になってる、魔物ハンターが言っていたんだよ。
オレアンの住人が、一人残らず死んだって」
「嘘つけ。だって、四日前にオボロのおっちゃんが、ディックに依頼書渡したんだぜ。
一ヶ月も前に崩壊したんなら、誰が出したんだよ」
「おれに聞くなよ、知るわけないだろ」

 迫ってくるリアトリスに険しい顔をしながら、ダリオが正論で返してくる。
 リアトリスは、丁度側にやってきたイェーガーに、持っていた荷物を渡した。

「おっちゃん。おいら、ちょっと野暮用思い出した。
ごめん、夜の手伝いはするから、これ持って帰って」
「おいおい、リア坊。どこに行くんだ」

 呆気に取られるイェーガーとダリオをそのままに、リアトリスは人混みを掻き分けていく。
 まだ昼前だ。この時間帯、オボロはティナと一緒に喫茶店にいる筈だった。そして向かえば、
 喫茶店は案の定開いており、オボロは閑古鳥の鳴く店内で、ティナと談笑している。

「オボロのおっちゃん!」

 そう呼びながら中に入ると、オボロが「おっ」と声を上げて朗らかに微笑んだ。

「リア坊、どうしたの。血相変えて」
「おっちゃん。オボロのおっちゃんがディックに出した依頼書、誰から送られてきた?」
「ん? オレアンの住人からだよ。言わなかったかい?」
「それ、本当にオレアンの住人だったか?」

 食い下がるリアトリスに、オボロは不思議そうな顔をする。ティナと顔を見合わせた。
 ティナがゆっくりと、リアトリスに近付いていく。

「リア、どうしたの?」

 ゆったりと尋ねてくるティナには目も呉れず、リアトリスはオボロに言った。

「商隊の人が言っていたんだ。オレアンは、ひと月ちょっと前に崩壊してるって」

 それを聞いても、オボロは冷静に返した。

「四日前に依頼書が届いたんだよ。じゃあ、誰が出してきたの」

 ダリオに尋ねたことと、全く同じことを尋ねてくるオボロに、リアトリスは顔を顰めた。
 そしてリアトリスは、苦渋の決断をする。本当は頼りたくないし、喋りたくもない。
 そもそも、顔を合わせたくもない。しかし、今頼れるのは彼女しかいない。




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