05


「まあ、封印を解いたラストが最初に来るのは、おまえさんのところだろうけどな」

 キャンディーが無くなり、オズバルドは棒をその場に捨てる。そして、懐に手を突っ込むと、
 三本目の棒付きキャンディーを取り出した。包み紙を開いていく。

「オレは当事者じゃないから知らんけどな。また、あんな事態にならんように、
会いに来たら、ちゃんと話し合えよ」
「まるで、あの死闘の原因があたしだと言いたげだな」

 吐き捨てるように言うシェリーを、オズバルドは碧緑色の目で鋭く見据えた。

「オレの目から見ても、おまえさんは別嬪だよ。そのことはおまえさんだって、自分で理解していることだろ。
まっ、シェリーは、美女は美女でも、強大な力を持つ者を、虜にして惑わして、破滅へと導く、傾国の美女だけどねぇ」

 そう言いながら、オズバルドは静かに目を細めた。

「あんなことが次に起きたら、今度は死闘なんてもんじゃない」

 棒付きキャンディーを口から外し、そのキャンディーをシェリーに向ける。

「分かっている筈だ。混血ハーフブラッドじゃあ、ラストには勝てない。
今度の戦いは、ラスト様による一方的な虐殺だ」
「……あいつを知っているのか」

 シェリーの言葉に、オズバルドは含むような笑みを浮かべた。キャンディーの無くなった棒をその場に捨てる。

「おまえさんの話は、色々と聞こえてくるもんでね。魔将ともあろうお方が、よりにもよって、
混血ハーフブラッドを傍に置いているときた。ヒースコートも言っていたぜ。
是非お目に掛かりたいもんだねぇってな。そして、オレとしても見てみたいよ。
あのシェリー様の心を射止めた、混じり者のツラを」

 嘲笑するような言い方に、シェリーは不快そうに眉を潜める。オズバルドは肩を揺らす。
 そして、顎に手を当てながら目を細めた。

「とにかく、忠告はしてやったんだ。オレを失望させるような、そんな結果だけは招くなよ」
「ふん、忠告か。随分と優しいじゃないか」
「同じ魔将として、無様な醜態を晒されることは嫌なのさ。それに、」

 オズバルドはシェリーの淡麗な顔を一瞥すると、にっこりと微笑んだ。

「オレも、その美しい顔が歪む所は見たくないもんでね」

 低く笑うオズバルドは、手を振って踵を返す。そうして、二、三歩進んだところで忽然と姿を消した。
 シェリーは鼻を鳴らして、忌々しげに舌打ちをする。固く握った拳を握り、その場に残された棒の山を焼却した。



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