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【The nature of man―ある男の性質―】
Gloss or the person saw the white neck, new with trembling hands I hold her.
Once on her neck gently Fang pierce, like the true snow white skin,
red flowers bloom.
Loved his voice raised and therefore the body is short, shaking the instincts,
there is no way.
To drink it all, keep an eye on her person.
                          ―――――――――――

 洗礼の日エアヴェクスが終わり、町にも静けさが戻ってきた。
 今日も炭鉱夫は元気にルクレール鉱山に向かい、イェーガー夫婦はアーリットの営業に勤しんでいる。
 リアトリスはオボロの喫茶店にいた。その喫茶店は、今日もまた閑古鳥が鳴いている。
 経営状態は、決して良くないだろう。しかし、それでも閉店しないのは、このようにして、
 魔物討伐依頼を出し、その際出てくる魔力結晶を転売しているからだと、リアトリスは思っている。

「リア坊も、もう大人なんだね。おまえさんとは、まだ数ヵ月程しか経っていないけど、
子供が大人になるのを見るのは、なんだか感慨深いねぇ」

 そう言うオボロに、カウンター席に腰を下ろしていたティナが尋ねた。

「かんがい、ぶかい、どういう、いみ、ですの?」
「しみじみとすることだよ」
「しみじみ? よく、わからない、ですの」

 足をぶらぶら動かしながら、ティナが首を傾げている。

「そうだね。ティナちゃんには、難しいねえ」

 そう言いながら、オボロは静かにカップを拭いていた。店内を訪れる客は現れない。
 その静かな空間で、ティナが鼻歌を歌いながら、鉢植えに水を遣っている。
 ふと、思い出したようにオボロが口を開いた。

「そういえば、アストワースで、吸血鬼が最近現れるみたいだね」

 吸血鬼という単語に、リアトリスの眉が小さく上がる。
 アストワースは、ギルクォードから北西に進んだ所にある、比較的大きな町だ。
 その町には娼館や酒場といった、娯楽施設が多く点在している。多くの魔物に脅かされる時代でありながら、
 そのように緊張感の無い町であるのは、魔物ハンターの支部が置かれているからだ。
 何かあれば魔物ハンターが、すぐに飛び出してくる。その安心感からか、人々はやや開放的になっているという。

「この間、市場でダリオさんに聞いたんだけどね。魔物ハンターの人もてんやわんやしているみたい。
 なんでも、近くに吸血鬼達の巣が出来たとかで、近々そこに乗り込んで、駆除するとかしないとか」
「……へえ」

 相槌を打ちながら、リアトリスはコップの中の水を飲み干した。
 口の中で、今聞いた町の名前を繰り返す。吸血鬼なんて探せばその辺にいそうな魔物だ。
 しかし、もしかしたらあいつかもしれないと、そんな考えが頭を掠める。あの嫌な笑顔と破壊力が、
 そして仲間達の死に様が、いつまでも頭にこびり付いて離れない。

「どうしたの、リア坊。怖い顔してるけど」

 リアトリスはオボロに答えず、飲食代をカウンターに置いた。
 コインが無機質な音を立てて、カウンターに散らばっていく。

「おっちゃん、ごちそうさん」
「ああ……またね」

 オボロは不思議そうな顔をして、ティナと顔を合わせた。



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