Kaolu X Luna
街中を歩くと、いつもより妙にカップルの姿が目についた。
いや、そういう俺も、一応デートの最中なのだが……。
けれど誰もが皆一様にベタベタとして、雰囲気までもがどことなくピンク色なのだから、少し異様に見えるのは仕方あるまい。
俺は首を傾げた。
「ルナ、今日は何か祭りでもあるのか?」
「お祭り?」
この人混みは、それ以外に考えられない。
案の定、ルナは少し考えてからこくんとうなずいて見せた。
「まあ、お祭りといえばお祭り、かな」
「やはりそうか……」
俺はため息を零した。
人混みは苦手だ。
どうも疲れる。
不満の色をありありと出したら、ルナが不満げにこちらを見た。
「もう、その様子じゃやっぱり気づいてないわね?」
「……何が」
「ホワイトデーよ、ホワイトデー!」
ホワイトデー?
耳慣れぬ言葉にまた首を傾げる。
ホワイトデー……白い日。
なんだ? 雪か?
なくはないだろうが、もう三月だぞ。
頭で色々考えてみるが、どうもパッとしない。
「ホワイトデーっていうのは、バレンタインのお返しに、今度は男の子から好きな女の子に何か贈る日のことなの。
知らなかった?」
「……初耳だ」
でも、なるほど。
ようやくわかった。
先ほどからルナがどことなく不機嫌だった訳。
クスリと口元がほころぶ。
待っていてくれたのだ。
チョコレートのお返しを。
原因がわかってしまえば、することは一つだけ。
「何か欲しいものはあるか?」
「んー、惑星開拓技師の資格」
「…………」
「冗談よ。いや、欲しいけど。
でも、とりあえず今日はずっとこうしていたいかな?」
そう言って、ルナは腕をからめてくる。
「……おい」
突然のことで、少し驚いた。
「だめ?」
「……仕方ないな」
息を吐く。
はたから見れば、きっと周りのカップルたちと同じ。
ピンクな雰囲気。
でも、まあ、ルナが笑っているから良しとしようか。