夕日は冷たい風とともに墓地を吹き照らし、時期に夕闇を連れ、去っていく。
たばこをふかし、‘‘猿飛アスマ”と書かれた墓石を見つめ、シカマルは苦しげに顔を歪めた。
その背中は小さく見え、未だアスマの死を悔やみ、立ち直れずにいる。
「シカマル。」
呼びかけても返事はなく、あなたのほうが死人みたいだ、と口走りそうになる。
身動きしないシカマルに近づき、その肩にそっと手を置いた。
「シカマル、今日は私の家に行こう。」
「……どうして。」
「どうしても。」
昔から無名はシカマルが自分のわがままに弱いことは知っているため、こう言えばシカマルはきっとこう言う、というのは熟知していた。
少し強めに頼めばシカマルは言うことを聞くのに、予想に反して、シカマルは拒否した。
「今日はやめとく。」
「………っ」
ようやく立ち上がったシカマルは背を向けたまま空を仰いだ。
青みがかってきた空にふぅっと息を吐き出し、風に消えていくたばこの煙に舌打ちをこぼす。
お願いだから、と後ろで顔を俯かせる無名にも気づかず、シカマルは墓地を出るために歩き出し、その途中で足を止めた。
「明日でもいいだろ、お前非番だし。」
「ううん、明日は任務。」
「……そうかよ。
なら帰ってきてからでいいだろ。」
「ううん………、うん。」
一度首を横に振り、迷いながら頷いた無名をシカマルは初めて視界に映し、目を見開いた。
アカデミーの時から変わらない無邪気な笑顔でも、めんどくせぇと呟く度に見せた困った笑顔でもなく、無名の表情は憂うげに伏せられていた。
「その任務ね……いや、なんでもない。
じゃあ、私が帰ってきたらさ……また昔みたいに二人で雲でも眺めよっか。」
「あ、ああ…。」
「だから、待っててね…私のこと。」
顔を上げた無名は、見慣れた澄んだ笑顔で、シカマルは安堵するとともに眉をひそめた。
「なぁ、無名。」
「ん?」
「………待ってる。」
「……、うんっ」
もう戻らない私をどうか許して