(名前変換なし)
「うぁ、くっ……は…ぁ………っ」
夜風が草原を駆け抜け、揺れた背の高い草は地で苦しみ空気を求める少女の頬をくすぐる。
涙を浮かべこちらを見つめる少女を、オビトは顔を歪め、首を絞める手にきつく、力を込めた。
「違う!お前はリンじゃない!違う…!」
少女に出会った時から、この少女にはリンの面影がある、と感じていた。
肩にかかりそうな茶髪、大きなくりっとした目、紫のマークはないが若干幼い顔立ちと、一目見た時勘違いをしてしまうほどだったが、似ているのは外見だけではない。
「聞いてくださいよ!ボク、暁の正式メンバーになったんスよ!!」
「ほんと!?おめでとう、トビ!」
「トビてめぇ!何任務に遅れてんのにちんたらしてんだ!うん!」
「デ、デイダラ…!トビだって遅れたのには訳があるんだよ、ね?」
「トビっておっちょこちょいなんだから…。」
「わたし、ほんとは人の命を奪うなんて嫌なんだ
だからずっと医療忍者になりたいって……。」
まるで自分のことのように喜ぶ姿、誰かを宥める姿、眉を下げ苦笑する姿、命を想い切なく目を細めるその表情、全てがリンと重なり、オビトの心を蝕む。
何故リン本人ではなく代わりにこの少女が生きているのか、この少女はリンの生まれ変わりなのか。
この少女が死ねば、リンは自分の前に現れるのか。
リンと少女、二人の姿はオビトの脳裏に浮かんでは消え、そして錯乱させていく。
「違、う……!お前は…!お前は!!」
ぎりりと、細い首がいっそう細く、爪が食い込んだ。
痛みに耐え、少女はオビトの腕を掴んでいた手をオレンジ色の面へと移した。
「…ト…………、ビ…」
トビのお面、かっこいいね!
"オビトのゴーグル、かっこいいね。"
やがて、だらりと力なく落ちていく手を、オビトは掴んだ。
少女は最後の最後で取り繕った笑顔で、その肉体の時を止めた。
一度目に失ったのは月の綺麗な血の海で、二度目、再び失う時は果てしない草原で。
「お前は帰ってきた……オレのもとに…。」
冷たく横たわる体を抱え、その髪に指を絡める。
夜風が二人を撫で、髪がなびいて覗いた少女のうなじには、赤い爪痕が残っていた。
項に残した所有印