真鶴に託す | ナノ



どうか気付いて
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私にとっての木ノ葉の里は、三代目火影猿飛ヒルゼンの治める、当時は戦争の影もあり、活き活きとしてはいたがどこか沈んだ、それでも心地の良い場所だった。

死の世界から蘇った昨日の今日。
私が死んでから今までの空白の十数年のことを伝えられて、居ても立っても居られず、危険を伴うと知りつつも故郷に連れて来てもらったのだ。

私の死んだ後、戦争は終結を迎えた。
里の情勢も変わり、火影は三代目猿飛ヒルゼンから四代目波風ミナトに移ったというが、それは門の外、高い木の上から里の中を覗き込んだ私の目に映る火影の顔岩が事実だと示していた。

彼は素晴らしい火影だったのだろう。
四代目火影就任した数年後、里は突如化け狐、九尾に襲われたのだそうだ。
それを自らの命と引き換えに封印したのが、まさに四代目火影だった。
その後、一年前大蛇丸によって起こされた木ノ葉崩しまでは三代目が里を治め、今は五代目火影に三忍綱手姫が就任している。

おかしな話だ。
私は"昨日"彼に会って、彼の腕に抱かれていたはずなのに、目が覚めたら彼が亡くなって十年経ったなんて。
信じられるわけなどなかった。

「真鶴様、戻りましょう。
長居は禁物です。」
「…うん、ごめん。もうちょっとだけ。」

姿を見られてはまずいとは分かっているけど、里から目を離せなかった。
正確には、下方、里から出るところであろう、数人の中にいる男。
上忍ベストを着た銀髪の、額当てで顔の半分を隠しマスクをした、はたけカカシから。

大きくなったね、なんて。

「カカシ先生おっそーい。
また遅刻…集合は二時間前だったんですけど。」
「いや〜悪いね。
朝起きたら鳥が頭に巣作っちゃって。」
「冗談よしてくださいよ先生。」

あの人の遅刻癖でも移ってしまったのだろうか。
そんな変なところ似てほしくなかったんだけどなぁ、と苦笑。

今この里に、かつてのはたけカカシの所属していた班の仲間は、もういない。
うちはオビトが神無毘橋の戦いにて命を落としたのは、私もよく知っている。
そして、最期の任務で私も共にしたのはらリンは、私と同じ日に亡くなっていた。

────「こちら無事を確認致しました。」

あの声は、カカシだけの無事を確認したのだ。
分かっていた。
彼女を背負った時から、その身体から鼓動はなく、呼吸すら止まっていたこと。
それでもどこかで助かるのではないかと信じていたのに、私は結局何も救えなかった。

「…行こう、カブト。」
「はい。」

彼の前に現れて、ごめんなさいと謝ることができたら、なんて死人の私には許されない。
まだ私のことを覚えてくれているだろうか。
もしかしたら、こんな駄目な女のことなど忘れているのかもしれない。

忘れてくれていた方が、幸せかもしれない。

助かったことだけ知れれば、それで十分。
彼に背を向けて、邪念を振り払って、故郷を離れた。



「カカシ先生、どこ見てるんですか?」
「何かいたんですか?」
「あぁ、いや、今朝の鳥かな。」
「もう冗談やめてくださいよ!」

感じた視線は、切ないくらい穏やかだった。


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