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06迷い子の行き先


ショックウェーブが居なくなったアカデミーは何とも味気なくて、フェザーはすっかり大人しくなってしまった。元々、熱中するものがない時はぼんやりしている事が多かったがこれまでの落差が激しすぎてまるで別人だった。


『暇ならバイトでもしろよ。どーせ、もうすぐ俺らも卒業なんだからよ。』
『んー…』


エネルゴンジュースを啜りながら、気のない返事を
フェザーは返す。だらーんと体の力を抜いて椅子に凭れながら、彼女はスタースクリームの言った言葉を復唱した。バイト、か…。いいかもしれない。小銭稼ぎだけでも出来れば、更に質のいい武器の制作に力が入れられる。
急にニヤニヤと口元を緩め出した幼馴染みにスタースクリームは訳が分からず、とりあえず機嫌が良くなったなら良いかと放っておく事にした。

思い立ったら即行動。アカデミーの近くにあるカスタマイズの店にフェザーはアルバイトを申し込んだ。ラボでの研究より仕事はずっと緩く、雑然とした機械と油に囲まれたその空間はとても落ち着く所だった。


『まいど。今回は高額品だから、このオプション代はまけとくよ。』


販売する側に立って、かじる程度だが店での商売のノウハウも学んだ。若い女子が多くいる場所でもなかったので大体の客は皆、フェザーには優しかったが店主はいつも気を付けるよう彼女に父親のように口酸っぱかった。


『舐めた口をきくヤツがいたら、その時は店を壊さない程度にやってやれ。代金はしっかり戴くんだぞ。』
『ラジャ、マスター!任せて下さいっ』


小型の新型キャノンを装備して、フェザーはコロコロと笑いながら店番をしていた。一人立ち出来るよう、彼女は彼女なりにこれからの未来を考えていた。自分の身を守れるようアカデミーでの戦闘訓練にも参加するようになった。ショックウェーブと一緒の生物研究も楽しかったが、やはり昔から自分が好きだった武器に触る事が一番しっくりくるのをフェザーは自覚し始めていた。


『最近、きな臭い動きをあちこちで聞くんだ。内政も何だか揉めてるらしいしその内、大きな戦争があるかもなあ。』
『戦争…?』
『暫くはケイオンも平和だったが…、俺達みたいな仕事が繁盛し過ぎるのも考えもんだよ。』
『…』
『お前はきっといい武器商人になれるよ、フェザー。…若い女の子に俺は勧めないがね。』


その呟きに、フェザーはちくりと、小さな痛みを覚えたが気のせいだと決め込んだ。足元に見えない黒い海が一瞬広がったような。一度崩れだしたら止められない不安に足を掴まれた気がして、彼女はそれにきつく蓋をした。


『…ねぇ、マスター!バイトが終わってラボに行くんだけど今日はね、ショックウェーブが来るんだよ!』
『そうか。フェザーは本当に彼が好きだな。』
『うん!』


ああ、早く彼に会いたいな。ショックウェーブといる時は周りの世界が全部輝いてみえるのに。
フェザーは店主の入れてくれた液体エネルゴンを飲みながら、にこにこと笑顔で座っていた。

(…怖くなんかない、なんにも)

ショックウェーブに会ったらそんなのどこかに飛んでいってしまうから。
―――――――――――
2014 03 04

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