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10その命運を分けるのは、


応援要請のあった基地に辿り着くと、既に施設は陥落していた。生き残りの金属生命体を撤退させる為、退路を確保する事となり、リオラは外堀から援護射撃を。ネオフォックスは敵陣ギリギリまで攻めこんで行った。
敵陣の安定した遥か後方で悠々と指揮を執っていたのはモノアイが印象的なショックウェーブ。メガトロンはいないようだ。少し息をついたのも束の間、その時、空からの攻撃が辺りに容赦なく降り注いだ。


「ハッハーァ!さあ、くたばっちまいなァ!!」
「!」


銀色の閃光から聞こえてくるのは場違いな程、軽快な声。彼女は拳を握りしめる。周りには致命傷を負い、動けない者もいた。まだ動ける自分が彼らを守らなければ。リオラはブタスターを構え、旋回して戻ってくる機体を静かに見つめた。
傍にいた兵士に追撃ミサイルの装填を頼む。

(スタースクリーム…)

心を無にして、メモリを奥へ押しやる。スピードは段違い。引き付けてから撃たないと倒せる確率はないに等しかった。
スタースクリームはゲーム感覚で戦争を楽しんでいた。オートボットは自身では飛行出来ない。青いエネルゴンが敵から流れ出すのを彼は遠目に眺め満足していた。次はもう少し低空から狙って終わらせてやろう、狙撃兵が残る岩影へ彼は勢いよく向かって行った。


「…今よ!(撃)てェ!」


勝負は一瞬だった。低空飛行により、スタースクリームの動きが僅かに鈍った。リオラを認識して、彼はそれまでの高揚感を失う。哀しそうに空を見上げ銃を構える彼女に引き金を引く事を躊躇い、代わりに翼に着弾を受けた。
無意識に避けたおかげで、致命傷をには至らない。しかし不時着は免れず彼は味方の陣営へ不安定ながらもどうにか舞い戻った。


「……なるほどなァ。アイアコンの中だ。そりゃ遭うこともあったか。」


一人ごちてスタースクリームは赤い眼を細めた。訓練では敢えて不得意な肉弾戦を彼女は主に行っていたが、銃火気の扱いは出会った頃から既に長けていた。命を懸けた戦場では、自分の最大の武器を使ってくるのは当然だ。驚いて甘さを露呈してしまったのは自分。彼女の事は…気に入っていたから。


「どうしたんです…スタースクリーム、ふざけ過ぎてやられたんですか?」
「けっ…言ってろ!さっさと直せ。」


着地した場所に来たメディックにスタースクリームは勢いのまま怒鳴りつけた。認識出来ない程離れた崖を彼はどこか遠い目で見つめる。出来れば生け捕りにして、…彼女は殺したくはない。しかしショックウェーブにそんな事を頼むのは癪だった。
あの綺麗な蒼の目の光が、失われない策を考えたが、空を裂いて閃光が走った時、彼はその希望を手放した。

――メガトロンが、来た。
重厚感たっぷりに彼は旋回して先頭に降り立つ。
戦々恐々とオートボット軍が隊列を乱す中、ネオフォックスを彼女は探した。リオラは通信で彼に下がるよう呼び掛けた。出来る限りの怪我人も運んだ。後はもう撤退するしかない。プライムの血を引くメガトロンと闘えるのはプライマスを継いだオライオンだけ。しかしオライオンは今、別の戦地で闘っておりすぐにこちらへ向かう事は出来なかった。
混乱の中、彼女はネオフォックスを隊列の左側に見つける。応答がなかったが、生きているのを見てリオラはほっと表情を緩めた。
それが失態だった。
メガトロンの大型ブラスターがリオラのいる辺りを狙い撃つ。避け簑にしていた岩が砕け、その衝撃で彼女はあっという間に左腕を肩から失った。
ネオフォックスの通信が遅れて返ってくるが痛みで言葉を返せない。流れ出すエネルゴンを感じながら彼女はひっくり返ったまま動けなかった。

(――オライオン……、私は間違えたのかな)

世界をより良くする為に、奮起するオライオンと共に在ろうとした。しかし実際は力でメガトロンに制圧され、サイバトロンは日に日に壊れて行く。
オライオンを信じている。信じようと決めた。しかし、今、星は確実に退化の一途を辿っていた。
積み上げてきたものが壊れていく。メガトロンの隣で彼がメガトロナスのままでいられるよう、尽くしていればこんな事にはならなかったのだろうか。思わず弱音が、心にこぼれ。


「        」


喧騒が彼方に霞んでいく。
オライオン…、その名を最後に呟いて彼女は意識を手放した。
―――――――――――
2014 01 09

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