番:金の瞳が終わる刻
※リオールの地にて。
キンブリー死ネタです。
ああ…こんなにも簡単に動かなくなる。
こんなにも簡単に、人は死ぬのだ。
冷たい土の感触に、体の熱が急速に奪われて行く。
「あっけない……ものですね。」
せっかく戦場に戻ってきたというのに。
過去のような、あのイシュヴァール戦の喜びをもう一度、得ようと。
あの少女も切り捨てて来たのに。
―――あの日。デビルズネストが軍の急襲を受けた日。私の着せた紅いドレスを纏い永遠の眠りについた彼女は今までで一番美しかった。
けれど、同時にとてもつまらなくなった。
もう、怯えながらも私を真っ直ぐに見つめた瞳が開く事はない。
頬に触れても動かない。
少し前まで、何するんですかとか、やめて下さいとか何とか。そんな他愛無い事を呟いて、困ったように赤くなっていたのに。
欲せば欲する程、彼女との距離は開いて……どうしようも無くなった。
「……ヒカル……」
最初はただの偶然だったのに。
あのラウンジで……一人座っていた貴女に、少し目が留まっただけだったのに。側に置いておきたいと欲に駆られ始めてしまった。
「…酷い人だ。貴女は私を狂わせただけでなく楽しみまですら奪ってしまった……」
腕に抱いた時の温もりを思い出すと、少しだけ寒さが和らいだ気がした。
(このまま眠ってしまえばもう一度、貴女に会えますかね?
……ああ…でも……それはきっと無理でしょうねえ……。
……必ず、邪魔をしに来そうな人がいますから。
ヒカル。
鈍感な貴女は気付きもしなかったでしょうが……“あの人”……。
所有欲だけでなく貴女の事、まんざらでも無かったですよ。)
視界が闇に呑まれる前、最後に彼が見上げたリオールの空は高く冴えた蒼だった。
――――――――――
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