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01ゼロの足跡


レノとの邂逅を果たしたヒスイリアはむず痒い思いのままミッドガルに向かった。再会を待ち望み涙するなんて柄じゃない。複雑な気持ちだった。
レノの話によると神羅の関係者には先の戦いで彼女は死んだことになっている。らしい。
今のヒスイリアの容姿はかつての浮き世めいたものとは異なり、目の色以外はごく普通の女性だった。

あの日から既に数ヶ月。
今更会いに行く事に抵抗を感じながらも彼女は、郊外に建設されたある療養施設へ共に向かっていた。


「ねぇレノ…私、やっぱり、」
「あー駄目だぞ、と。それ、お前の悪い癖だぞ。」


少し乱暴に握られた手は温かかった。バイクを相乗りして向かう途中見た、ミッドガルの街に遺された爪痕は凄まじいものだったが倒壊した市街地に人影は思ったよりも多く見受けられた。
きっと避難が間に合ったのだろう。血の臭いは少なくヒスイリアは少し安堵した。


「…クラウド達も無事でいるか知ってる?」
「ああ。多分、街の何処かにはいると思うぞ、と。この前ハイウインドが近くへ着陸してたから他の奴等もいるかもな。」
「そう。」


小さな溜め息がでる。果たしてどんな顔をして会えばいいか分からない。会うべき、なのかも。最後に見たクラウドの顔は悲壮に満ちていて、その原因を作ったのは自分だ。
明確な答えの出ないまま、バイクは目的地に到着し、レノは1ターンしてエンジンを切った。


「………ヒスイリア…、さん?本当にヒスイリアさんですか!!」


顔を上げると、聞き覚えのある声が欄干の上から降ってきた。明るい金色のボブが揺れる。掛け降りてくるイリーナの顔は混乱しつつも綻んでいて彼女はそれに救われた気がした。
お帰りなさいと告げてくれた事が嬉しくて、ヒスイリアは微笑んで頭を下げた。まだ受け入れてくれる人がいる。その事実は彼女の目頭を熱くさせたが何とか堪えた。

***

「…感動の再会にはあまりに間抜けな姿だが。今はこのままで赦してくれ。」
「いいえ。貴方もご無事で何よりです。ルーファウス神羅。」


タークスに通された室内では、ルーファウスが寝台に横たわっていた。体は痛々しい様だった。当然だ。彼も奇跡的に生き残った一人。傍に控えるツォンから言葉はなかったがその瞳は優しかった。
静かに薄い紫の布に包まれたものを手渡される。開けると、それは大空洞へ発つ前に彼に渡したマテリアだった。
ヒスイリアはペンダントを大切に持つ。ルーファウスの瞳と同じ色の石。ひび割れながらもそれは尚、美しい色を残しており彼女は静かに謝罪を述べた。


「ご免なさい…、私、貴方のマテリアを」
「構わない。それは君に与えたものだ。それに私は神羅ビルで君に命を救われたのだろう。」
「…」
「だが、気に病むなら私はそれを利用するが?構わないのか?」


美しいアイスブルーの瞳は、爛々と我に輝く。彼女はそれに首を横に振ると彼の前にマテリアを置いた。


「…私はもう、神羅には属さない。セフィロスは死にましたから。」


落ち着いた声だった。自分でも驚くほど冷静な声でヒスイリアはその意思を口にした。今しばらく離れる事になったが、最後に目にした彼は穏やかな表情をしていた。
生きて、生き抜いてこの生を終えればきっとまた会える。
昔の、彼に。

ルーファウスは苦笑すると、何も言葉を口にしなかった。彼女が置いたマテリアを彼は眺める。
あながち役に立たないわけではなかった。ヒスイリアは生きて帰ってきて、律儀にもマテリアを返して来た。相変わらず自分のものにはならないというが、それもいい。


「では友人として、これからは此処を訪れてくれ。それなら構わないだろう?マテリアの件はそれで無しだ。」


時間はある。口実も。難しい顔をするヒスイリアにルーファウスは目を細めて、椅子に掛けるよう促した。
――――――――――――――
アフターシリーズ始動。
2014 10 25

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