「もう、体調はいいのかしらん」

私のスタンド暴走事件を経て、2日。
XANXUSにスタンドを鎮静化させられたあと、あれだけ苦しかったのが嘘のように軽い気持ちになった。
XANXUSの体に流れている死ぬ気の炎は、珍しいもので私の流れている時と、外の流れている時を調和させてスタンドの暴走を押さえたのだろう、ということらしい。
ちなみにこれは、部屋のドアを直してくれたスクアーロ作戦隊長からの言葉である。

そして、XANXUSには隊服から見えないであろう首に下げている指輪をちゃんと指にはめておけと言われ、その時また、殴られた。
しかも、女の顔。あいつはイタリアーノじゃないのか、と疑った。
もちろん痛かった。しかし、なぜ私が首から先輩の形見である指輪を見つけられたのだろうか…謎は深まるばかり。
独立暗殺部隊のボスは、やはり一筋縄ではいかないやつだと改めて感じる。まだ数回しか会った事がないのにだ。


一昨日の出来事を思い出してふと、反応が遅れてしまった。





「ありがとうございます、ルッスーリアさん」

彼、いや彼女は私を見つけ話しかけてくれた。
初めて話しかけられたのは、入って1週間してからだったと思う。
まだパッショーネの幹部だということは知られていなかったと思う。身のこなしで気づく可能性はあるがそれはわからない。
理由はたしか面白いからだっけ、わからないけれども彼…彼女はいつも周りのことを良く見ている人だと思う。
ただ、普通に話しかけてくれるだけで、彼のコレクションなどを見なければ私も警戒せずに済んだのだろう。ただお部屋に呼ばれたときに入った瞬間の薬品の匂いでもうビンゴだった。
彼はネクロフィリアだった。
チョコラータもびっくり。冗談。

初めて彼…うん、もういいかな。彼に会ったのが彼の部屋だったので、コレクションがずらり。
一応メローネのスタンド関連で結構きつい現場を見ているため、そんなものを見慣れている私でも少し驚いた。





「やあね、借りて来た猫みたいにしないで、もっとリラックスして、ね」

借りて来た猫、というのはあながち間違っていない言い回しで、少しばかりどきり、とする。
パッショーネ所属だと言うことを知っているであろう幹部様の一人なんだから私自身も迂闊に発言をこぼしたりできないやつだ。
リラックスなんて、こんな場所じゃあできやしないよ。なんて言ったら私もホルマリン仲間になってしまうのだろうか…いや貧相な体つきしているから多分平気。多分だけど。



「こんなところで立ち話も難だから、ラウンジでお茶でもしましょ」
「え、私みたいな下っ端がルッスーリアさんとお茶なんてしたら多分殺されます」
「大丈夫よ、あなた。そ、れ、に、殺される気なんてさらさらないじゃない?」

そうです、が…言葉の綾とか。誘いをやんわり断りたいんだよ。とかそういうことは一切思わないのだろうか。それとも思った上で、わざと誘っているのだろうか。
彼の意図が読めずに居て私はまた少し困惑してしまう。
そう考えているうちに気づけばラウンジの扉を彼が開けていて、「レディファーストよ」なんて言ってくるのだから言い返しが何も出来ず、素直に入るしかなかった。
ソファに座っていてね、なんて良いながら彼はまたどこかへ行ってしまって。

ラウンジは、ずいぶんと高そうなソファにガラス製のローテーブル、そして花瓶には胡蝶蘭。
ボンゴレとは、やはり格も違うのだということを改めて知らされているようで。
私たちなどつい数年前まで、冷遇されすぎて謀反を起こした人たちだからな。そんな記憶は思い出したくもなく胡蝶蘭でも見ようかな、なんて思って席を立ち上がろうとすると彼がタイミングよく戻ってきてしまった。





「あら、紅茶とお菓子。持って来たのよ」
「お菓子…?」
「ええ、今日はティラミス。嫌いだったかしら」
「い、いえ!甘いもの、すっごい好きです。あの、気をまわせなくて…」
「よかった。いいのよ、私用意するのも好きなのよねぇ」

案外と、彼は可愛らしい性格をしているのかもしれない。
暗殺部隊に来てからは、隊服を着ていることが多かったためマスクを常につけていた。今日もそれは変わらなくて。
飲み物を飲むため、私はマスクをおろす。そして彼に出されたティラミスをスプーンで掬って食べると、コーヒーの味とマスカルポーネチーズの滑らかさに思わず微笑んでしまう程で。






「あら、素顔。可愛いのね」
「え、?あ、えーと…」
「マスクなんてやめちゃえばいいのに、せっかく可愛いんだから」

どこのお店のものなのだろうか、近場だったら買いにいきたいなぁなんて、思いながらもう一口頬張って、彼の視線に気づいた。
そして、口元を親指で優しく触られたと思えば、彼は自分の口に持っていく。
「ティラミス、口に付いていたわよ」だそうだ。私の顔に血が上って真っ赤になってしまっていて。
だからイタリアーノは、これだから。最近ドキドキすることなんて、任務関係のことばかりだったから。しかも彼は、ぉか…ニュートラルな人なはず。
そんな彼でも、普段から慣れていないこんな行動をされてしまうと、もう息が切れてしまう。






「ずいぶんと、うぶなのね」
「かかか、揶揄っているんです、か」
「あなたが可愛いからよ、思わず手が出ちゃったわ」


ふふふ、だそうで。
やはりイタリアーノは、血だ。生粋のイタリアーノだ。どんなにお姉さんな言葉を使っていても、なんでも。その手が暖かくて、少しだけ気を抜けた気がした。








甘くて苦くて暖かい








prev next
back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -