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■ジャンルごちゃまぜ
■長かったり短かったり会話だけだったり
◎ Jun 06 2054
※BL注意! 彼奴はチェシャ猫よりも狡猾で。
彼奴は大鴉よりも貪欲で。
彼奴を喩えるならなんだろうとぼんやりベッドの上で天井を眺めていると、ふと思い付く。
「……あぁ…『悪魔』か」
胸中で呟いたつもりが、実際声に出ていたようで、「え?」と振り返る長身の男が金髪を揺らして此方に寄ってくる。……そんな大きな声で言ったつもりはないが、相変わらず耳だけは良いらしい。
「何?」
「……、別に」
「えー、気になる。言ってよ」
……聞こえていた癖によく言う。
今度こそは胸の内だけでそう毒づいて、無言で傍らの毛布を肩まで引き上げる。室内は最適な温度に保たれている為寒くは無いが、ゆるゆると眠気がすぐそこまで来ていたからだ。
「…寝る」
そう短く相手に告げて、ごろりと寝返りをうつ。名残惜しそうな相手の顔が一瞬見えたが、知らぬふりをして目を閉じる。……相手と同じ性を受けた此の躯はそう何回も受け入れるようにつくられていない。
珍しく何も言わない相手の気配がふと動いて、次の瞬間にはあたたかい何かが髪に触れる感覚。……十中八九コイツの手だろうが、其れが妙にやさしくて、うっすらと目を開ける。チラ、と相手に視線を遣ると、幸か不幸か(多分後者だ)相手の目とかち合った。
その奥に揺れる、翳り。子動物の様な甘さを見せておきながら、その熱だけは猛獣顔負けだろう。
……安眠は、もう少し先か。
ひっそりと嘆息して、体の向きを変えた。
「…おいで」
くい、と金髪を引き寄せて、囁く。耳朶に飾られたシルバーピアスが、唇に触れてひやりとした感覚を残す。
だがそれも、すぐに相手の口唇の熱さに消えてしまって、遠ざかっていく眠気にもうひとつ溜め息を吐いた。
熱い唇に燻った欲が身体中を侵していくのを客観的に感じながら、ごく近くにある金色に手を伸ばす。……天使の容貌をした悪魔。そんな矛盾した喩えがコイツには似合いだと小さく笑うと、相手は不思議そうにひとつ瞬いた。
***
6月6日は悪魔の日と言うことで、突発小咄。
◎ May 06 2143
双子は忌むべきもの。そんな迷信が未だに息づく家に、産まれた。
憎悪を隠そうともしない眼と、言葉。それらが積もって心身を病んだ母親が死んだと聞かされたのは、多分二桁に手が届くか否かの歳の頃の、まだ肌寒い春の日だった。
……ふと思う。
あの日どちらかが死んだなら、何か変わっていただろうか。
「祀(まつり)」
「…、……ん」
聞き慣れた声と気配に、目を開ける。其処には同じく慣れた片割れの顔が在った。
「……生徒会、終わったの、未虎(みとら)」
「あぁ。悪かったな、待たせて」
「別に。助っ人頼まれてたから、丁度良かった」
「バレー部か?」
「んん。今日は、バスケ部」
…放課後片割れの生徒会の仕事が終わるまでの時間限定で、時々部活動の助っ人を請け負うようになった。時間も潰せるし気分転換にもなるから、我ながら良いアイデアだと思う。
そうか、と微笑んで首元できっちりと締めていた制服のネクタイを緩める片割れの兄──未虎は、ふと何かに気付いたように此方の目を覗き込んでくる。
「何」
「泣いたのか?」
「……泣いて、ないけど。何で」
「目のまわりが赤い」
「…。……あぁ…さっきまで、寝てたから」
言ってから、理由になってないなと内心嗤う。彼が来るまで眠っていたのは事実だが、それだけではそんな風にならないのは明白だ。
「…夢、みてた」
「夢?」
「オレと未虎が、棄てられた日の、夢」
「……そうか」
呟いて、未虎は目を伏せる。そしてそれを開くと、手を伸ばして此方の頭に置いた。
そのままわしゃわしゃと動物と接するように撫でるその手に目を細めていると、未虎は曖昧な笑みを浮かべて続ける。
「怖かったな」
「……ん。でも、未虎が起こしてくれたから」
昔から、そうだ。悪夢を視た時は、必ず彼が泥沼の様な其処から引っぱり出してくれる。
「もう、大丈夫。帰ろ」
「あぁ」
貴重品しか入っていない薄い鞄を手に、席を立つ。
……まだ夢の名残で微かに震える手は、彼には見えていなかっただろうか。
(あれが、夢じゃなかったら)
ふと、思う。
あの日、何かが変わっていたら、どちらが死んでいたのだろう。
(きっと、オレだ)
そんな風に確信めいたことを思うと、手の震えが刹那止まった気がした。
***
ふと浮かんだ双子の話。
斎条(さいじょう)祀くん(弟)と未虎くん(兄)。名字出てきませんでしたけどね←
◎ Feb 14 1730
『悪夢』の関雪でバレンタインss。雪村視点。 仕事帰り。伊藤さんへの報告を済ませて向かうのは、相方の部屋。
一応ノックをして、反応を待つ。……が、何も返ってこない。
事前にメールを入れたから入れ違いはないと思うが、無反応というのも心配だ。
そう思いながら、ドアを開ける。予想に反してすんなり開いてしまったそれに、ひとつ瞬いて室内へ足を踏み入れる。
「……関口?」
静かな部屋。微かに聞こえる電子機器の音を頼りに部屋を見回す。黒いノートパソコンの液晶が明るく光るデスク。其処に突っ伏したまま規則的に上下する相方の背中。…どうやら寝ているらしい。それなら何の反応も返ってこないことにも納得がいく、と私は彼に一歩近づいた。
パソコンの横で普段は吸わない煙草が灰皿の中に積み上がっている。おまけにマグカップの中身はブラックのコーヒー。計画性のある彼が此処まで追い詰められていたのだから、相当急ぎの仕事だったのだろう。この吸殻の量だと、二徹といったところだろうか。
「……、……断って休めば良いのに」
只でさえ働き過ぎなのだから。
そう思わず文句をこぼすのと、彼が小さく声を洩らすのは、同時。
やがて気配に気付いたのか、褐色の目がうっすらと開いた。
「……ん、あれ……雪村…?」
「えぇ、お邪魔してます」
「いや、良いけど……え、今何時…」
「夜の十一時を回ったところですね」
「…あー…」
力ないため息を吐いて、関口は上半身を起こす。
「まだ仕事の途中なら、出直しますけど」
「もう終わったから良いよ」
そう笑ってパソコンの電源を落とす関口の表情は、やはり疲労の色が濃い。いつか過労で倒れてしまうのではないかと心中で危ぶんでいると、関口が二三咳き込んだ。
「風邪ですか?」
「や、多分煙草の吸い過ぎ。飲み慣れないコーヒーなんか飲んだから、余計かもな」
まだ口のなかが苦い、と苦笑気味に喉元を擦る相方に溜め息を吐いて、私は水道水を汲んで手渡す。
「…じゃあ、これ、口直しにどうですか」
ついでに差し出したそれに、関口はパチリと大きく瞬いた。
「仕事先のチョコレートが美味だと春夏秋冬さんに教えていただいたので、お土産です」
…日が日なだけに手に入れるのも大変だったなんて、絶対に言わないけれど。
***
雪村が微妙にデレた(笑)
灰神楽は30円のブラックサンダーを休憩時間に食べつつ授業に勤しみます。えぇ。
◎ Dec 31 2359
シリーズ『悪夢は死に華を咲かせる』の面子の年末年始。◎鈴木と雨宮の場合
「形式だけでもやっとけってカップ麺渡されたけどさぁ、俺昨日もカップ麺だったんだよね」
「はは……。でも雨宮さん、蕎麦じゃなくて良かったんですか?」
「あぁ、俺蕎麦アレルギーだから」
「そうだったんですか」
「うん。そういえば鈴木、あと数分で年越すけど、来年の目標決めたの?」
「あ、いえ、まだ…」
「ふぅん。俺としては、仕事終わりに毎回毎回泣きそうな顔で帰ってくるのやめて欲しいなぁ」
「……精進します…」
***
年越しそばはカップ麺派のふたり。
雨宮は箸の使い方綺麗そうだなとふと思いました。◎春夏秋冬と七詩の場合
「……」
「……眠いなら寝たらどうだ。待っていたところで赤い服を着た老人は来ないぞ」
「……、…それはクリスマス」
「知っている」
「…」
「…」
「……」
「……日付が替わったな」
「…うん」
「…今年も宜しく」
「…うん」
***
あんまり普段と変わらないふたり。お蕎麦は既に完食済みのようです。◎伊藤と御子柴の場合
「お久し振りです、伊藤さん。今日はお休みなんですね」
「年末くらい休ませろ。つーか、珍しいな、お前が直々に“こっち”に来るなんざ」
「私もお休みを頂きましたから。あぁ、鈴木くんは元気ですか?」
「相変わらずだ。来年はもう少し使えるようになってもらわねぇとな」
「ふふ、手厳しいですね、“覇王”は」
「…“魔王”に言われたかねぇよ」
***
なんとなく御子柴さんが苦手な伊藤さん(笑)
そして来年も不憫な予感の鈴木くん。◎関口と雪村の場合
「……、………殊更寒くありませんか、今日」
「まぁ冬だからな。つゆ足して来ようか?」
「いえ、大丈夫です。私の事は気にしなくて良いですから、関口は自分の分を食べてください。のびますよ」
「ん…じゃあ、お言葉に甘えて」
「……」
「どうかした? あ、紅白観たいなら観てもいいけど」
「いえ…」
「……? そろそろ日付替わるな」
「はい」
「5、4、3、」
「……」
「2、1、0。──誕生日おめでとう、雪村」
「え?」
「あぁ、もしかして俺が忘れてると思ってた? 流石に相方の誕生日は忘れないよ」
「……自分の誕生日は忘れる癖に」
「それは良いんだよ。ケーキは冷蔵庫に入ってるから、今夜食べるとして…まぁ取り敢えず、新年の挨拶しとこうか。…今年も宜しく」
「ふふ…此方こそ」
***
ラストは関雪。因みにお蕎麦もケーキも関口の手作りです。
◎ Dec 23 1634
ss『良い子には狂気がよく似合う』の小噺。「そういえば高橋」
「ハイ?」
「いつも音楽聴いてるけど、なに聴くの?」
「あー、競馬中継デス」
「競馬? …馬券買えないのに?」
「まァ聴くのは違法じゃないですカラ。結構楽しいですヨ?」
「へぇ。授業を聞くのも結構楽しいけどなぁ」
「オレは楽しくないんでー」
授業中。からからと笑う高橋は、とても愉しそうだった。
***
高橋と優等生くんで小噺。授業中ですが、周りは声を掛けないらしいです。と言うか掛けられない。先生も掛けられない(笑)
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