榊原女史の転機














――嗚呼、あの子もそうなのか。





 それは自分自身の“能力”を自覚した時から抱えていた。


 だから視界の端にあの子が“視えた”瞬間から、これは避けて通れない事だとは直感していた。


 いたるところが裂けた時代錯誤な簡易衣、泥と血にまみれた細い手足、背中に突き刺さった矢。


 これで頭が禿げていて鎧でも付けていたら「どこの落ち武者だ」と言っていたところだが、どう見ても十にも満たない子供の頭は黒々とした髪がぼさっと生えていた。


 そして・・・・当てもなくさ迷う様は親を見失った迷子のようにも見えて、けれど声も無く涙をこぼす様は子供らしくなかった。








 誰もその子を見ない。




 誰もその子に声をかけない。




 誰もその子にぶつからない。




 誰もがその子を“すり抜けていく”から。








 だから「またか」と思った。


 また私だけにしか“視えない”“聞こえない”“感じない”世界の存在が現れたのだと、すぐに気づいた。




 部屋の隅、雑踏の影、闇の中で蠢く何か。


 腸の飛び出た犬、首の無い猫、足の三つある鴉。


 しきりにこちらを手招く青白い女の手、突然響き渡る野太い絶命の声、空から繰り返し降ってくる人影etc・・・。




 世の大多数が“知らず”に暮らせるモノたちを、私は知っている。知ってしまった。


 認知できる体質と、干渉できる才能とを持ってしまったから。


 だからあれらのモノたちは火に集まる虫のように自然と私の存在を感知して、本能的に集まってくる。


 人間と同じように、誰かに認められなければ在れない存在だから。


・・・・・・・だからあちらが気づいてしまえば、私に無視できるはずがないのだ。





 そして、






 あの子は私を見た。




 あの子は私に声をかけた。




 あの子は私に手を伸ばして、―――







「・・・・・お前の心残りは何だ?」






 私はあの子の手を取った。






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 原作もアニメもほとんど知らないのに、落乱の夢小説読んでハマってカッとなった。

 捏造たっぷり、オチ無し、続編未定、中途半端に終わるお話始まるよ〜。




◎ここの夢主!
名前:榊原 色葉(=サカキバラ イロハ)
性別:女
年齢:元21歳(大学三年生)
好き:和菓子、小動物、綺麗なもの、平和平穏
嫌い:強いにおい、大型動物、妖怪悪霊、面倒騒動
性格:そこそこ器用でそこそこ不器用でそこそこ真面目でそこそこ不真面目な、ハイスペック霊能力者の漢前お姉さん


UP:2011/07/16
移動:2012/07/03


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