02
「きょっくげーーーんッッ!!!」
ガラスがパリーンと割れるのが先か、絶叫が響いたのが先か。
部屋の窓をぶち破って入ってきた人影に、おれは心当たりがありすぎて驚くよりため息を吐いた。
「・・・・・笹川、物を破壊するなとあれほど」
「久しぶりだな三島! これしきのことで倒れるなど相変わらず軟弱なヤツだ!」
「お前も相変わらず人の話聞かないな」
「君もね」
空気を割くように飛んできた鋭い声音に、おれは油の切れたブリキ人形のようにギギギと振り返った。
鋭い声音同様の鋭い目に合って、知らず知らず心拍が跳ね上がる。
「相変わらず危機感が足りない。弱いんだからもう少し自己防衛能力上げないと死ぬよ?」
「・・・・・・風紀委員長」
「今は風紀財団だ」
(・・・でも貴方がトップなのは変わらんでしょう・・・)
そしてお前がナンバー2なのも変わらないんだな、草壁。
トレードマークの咥えハッパは健在に、リーゼントを更に伸ばした友人を見つけて苦笑いした。
「ハルユキー!」
「ヒバード。久しぶり」
「ヒサシブリー!」
風紀委員長・・・いや風紀財団の(トップってどう呼ぶんだっけ?)雲雀さんがいるならお前もいるよな。
この甲高い声、昔は毎日のように聞いてイラッとしたもんだが、久しぶりだと懐かしいものだな。
というかお前今いくつになったんだ? 普通の鳥がそんなに長生きなはずがないんだが。
「あ、三島先輩目が覚め・・・・って何やってくれてるんですかお兄さんーーッ!!?」
「この防弾ガラスいくらしたと思ってやがんだッ!! 芝頭ァァッッ!!!」
「三島先輩、お久しぶり〜っス!」
「・・・・・・・久しぶり」
いやはや、この光景も懐かしい。
沢田の的確すぎるツッコミも、獄寺の罵声も、山本のKYぶりも、変わり無さ過ぎて心配になる。
ええっと、お前ら少しは成長したんだよな? 少しは。
「春幸さん・・・!」
「あ、ランボ」
「はい! お久しぶりですッ!! 怪我の具合は如何で――ブホッ!!?」
「怪我の具合はどうだ? 春幸」
「おれは調子良さそうだ・・・・・けど、」
「そうか。ならまたコーヒー淹れてくれ」
「お、おう。喜んで」
ランボ大丈夫か?
赤ん坊から一気に成長期を駆け上がったとしか思えない美少年=リボーンに踏み潰されて視界から消えたランボを心配しつつ、おれは素直にうなずくしかなかった。
「三島ぁあぁぁぁぁぁッッ!!!」
「三島くんッ!!」
「・・・・・・・ッ・・・・・・」
おっとこれまた懐かしい顔ぶれ。
懐かしすぎてさすがのおれも驚いた。
凪を引っ付けたまま立ち上がろうとして、ベッドが柔らかすぎるのと背筋に走った痛みにビビッて失敗して後ろに転倒。
そしたら「わーッ!!」だとか「ぎゃーッ!!」だとか悲鳴が上がるもんだから、聞こえる声だけでも大惨事。
「「「大丈夫(ですか)(か)ッ!!!?」」」
コーラスのようにぴったり重なった声と、視界にずらりと並ぶ顔顔顔顔顔。
揃いも揃った間抜けな顔に、おれは思わず噴出した。
「・・・・ああ、大丈夫」
おれはまだ覚悟しなくても良いらしい。
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