おまけ
【裏側】
少年が奥のキッチンへ消えると、リボーンは残りのエスプレッソに口をつけた。
質の良い豆を使ったとしても、リボーンの舌を満足させるコーヒーを淹れられる者はなかなかいない。
普段ある程度で自らを納得させているだけに、日本に渡って初めてとも言える美味いコーヒーとの出会いに密かに浮かれていた。
「・・・・しかし、まさかてめーとこんなところで会えるなんてな」
「それはお前もだろう」
まぁ、ある程度は想像つくが。
少年に“マスター”と呼ばれ慕われる男は、カウンター越しに苦笑を浮かべた。
使用済みの道具を洗うためにシャツをまくって現れた腕には、数え切れないほどの古い傷跡と誇らしげに刻まれた刺青。
「アイツがてめーの後継者・・・・・・・な訳ねーか」
「ああ。春幸に伝えるのはコーヒーだけだ」
奥のキッチンで手際良く調理を進める少年の、ダダ漏れな気配を感じながらリボーンはうなずいた。
この凄腕家庭教師の目からしても、マフィアの素質が欠片もない少年である。
「ボスには感謝している。俺の我儘を叶えてくれたおかげで、春幸と巡り会えた」
「その言葉は9代目にしっかり報告しといてやる。が、平和ボケしすぎて春幸がオレたちの事情に巻き込まれる可能性まで忘れんじゃねーぞ」
「ああ、忘れないさ」
穏やかなマスターの灰色の瞳に獰猛な獣の光が宿ることを、
「手を出す輩には、死ぬほど後悔させてやろう」
春幸が知る日は来ないだろう。
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