※キラが変態です。最強です。そしてアスランがムッツリです。下品極まりない話で下ネタなギャグでもよろしければどうぞ。



「…ずるいなぁアスランは」
「は?」


ぐてーっと長机の上に頬杖をついていたキラが突っ伏して恨めしげな視線をアスランに送る。
いきなりなんなんだ、と眉を顰めた私は、書類を作成する為に滑らせていたペンを思わず止めてキラを見たけれど、キラはずるいずるいと言ってふて腐れたままだ。どうでもいいことを言うくらいなら仕事をしろ生徒会長。無気力な上司を持つと部下は苦労する。
キラはこの学園の生徒会長でありながら仕事をほとんど丸投げして、自身の趣味であるとかいうプログラミングに勤しんでいる。完璧なプログラミング構成には感服の意を示すけれど、それと生徒会の仕事とは話が別だ。彼一人が仕事をしないせいでそれが私やアスランに回ってくるのは勘弁してもらいたい。全委員会の会計処理の途中なのだ、せめて邪魔するなと言いたかった。

おそらくこの学園一の苦労人、キラにずるいと言われた当のアスランは、いきなり言いがかりをつけられてきょとんとしていた。
そりゃそうだ、ずるいと言われるほどアスランは抜け目のない人物ではない。それはむしろキラの方だ。アスランは馬鹿がつくほどの正直者だから、誰かを騙したり陥れようとしたりするはずがない。
何がどうして、と目を瞬かせていたアスランは『ハロ』と名付けた小さな機械(人工知能搭載だと嬉々として語られたなぁ…)を弄くっていた手を止めた。ああ、こいつは立派な機械オタクだった。機械バカだ。

そんなアスランに冷ややかな視線を送っていたキラは「だってさ、」と口を尖らせる。


「どう考えてもアスランと名前が恋人同士っておかしくない?ねぇ名前、機械オタクで生真面目でむっつりで童貞なアスランのどこがいいのさ」
「なっ…!?変な言いがかりはやめろよ!」
「全部本当のことでしょ。まだ名前と手しか繋いでないってこと、僕知ってるんだよ」
「それは名前のことが大事だからだ!変なことしか考えてないお前と一緒にするな!」
「変なことって酷いなぁ。エロス、つまりセックスは人間の本能であり義務だよ。子孫繁栄に必要なんだ。この世からエロスを取り除いたら生物は滅ぶしかないじゃない。それを恥ずかしがってコソコソする方がおかしいと思わない?」
「セッ…!?」
「大体毎日名前のこと考えてムラムラしちゃってトイレに駆け込んでるようなアスランにそんなこと言われたくないなぁ」
「え、そうなの?アスラン」
「違う!確かに名前とそういうの…とか考えたことはあるけど、毎日じゃない!」
「(そこは否定するんだ)」
「あはは、ダメだなぁアスランは。僕は毎日名前と×××してることとか×××してもらってることとか名前が真っ赤な顔して喘いでるとことか妄想してるけど」
「…変態以外の何者でもないじゃない。キラはもう本当にありがとうございました」
「褒めてくれて僕も嬉しいよ」
「褒めてない」


きっぱりと言い放った私は、何でキラと幼馴染なんだろうと深いため息をついてしまった。
小さい時はこんな変態じゃなかった。女の子みたいに可愛くて純粋無垢でちょっとつつけばすぐ泣く弱虫で優しかった子だったのに、いつのまにかこんなセクハラ発言ばかりする変態に育ってしまった。変わらないのは外見だけなので、女の子みたいな顔で爆弾発言するのはちょっとやめてほしい。イメージが崩れる。
けれどそれは世渡り上手で要領がいいキラのこと。先生や女子生徒達には化けの皮を被っているらしく、『品行方正で優秀な生徒会長』を演じているから驚きだ。一体キラのどこを見たらそんなことになるのか、もう一度胸に手を当ててよく考え直してほしい。
フェミニストだの何だのときゃあきゃあ騒がれているのだって、要は女遊びが激しいのと同意義なのだ。ただ別れ際になるとキラに上手く丸め込まれるから、捨てられたと思わないだけで。そういえばフレイだけは酷くキラを罵っていたから、賢明な彼女はキラの腹黒さに気付いていたのだろう。ラクスは…付き合っていたのかよくわからないが、キラと同じような危険を感じる時が多々あるので同じ人種同士気が合うのだろう。

まぁ変態加減に関してはアスランも負けてなかったようで、ちょっとショックだ。
私なんでアスランと付き合ってるんだろう。いくら幼馴染がキラとアスランだけだったからって、他の選択肢はなかったのか。キラよりはマシだと思ったのだろうか。
昔からキラに押され気味だったアスランは今もこうして口喧嘩に負けそうになっている。頑張れ、こんなくだらない言い争いに勝ってもらったってちっとも嬉しくないけど頑張れ。ここで負けたら身の危険を感じる。キラに。

私の堅固な拒絶にも関わらずにっこりと笑ったキラは、頬杖をつきながら蕩けるような甘い微笑みを浮かべた。


「ねぇ名前、アスランなんかと付き合うのやめて僕にしときなよ。絶対に損はさせないから」
「…何言ってるんだキラ。ふざけるのもいいかげんにしろ」
「本気だってば。少なくとも童貞のアスランより僕の方が名前を喜ばせられると思うけど?」


ふふん、と勝ち誇ったような笑みをアスランに向けたキラは更に続ける。


「巷では神技とも謳われる僕のテクにアスランが敵うわけないよ。僕なら名前が泣いて壊れちゃうまでぐちゅぐちゅに出来るのになぁ。もちろん上も下も」
「しなくていい。というか私キラの遊び相手の中の一人になる気ないから」
「俺は名前だけでいいんだ。キラは不特定多数と遊んでればいいじゃないか」
「やだなぁ、僕の実践経験の多さは名前を喜ばせる為の勉強ってだけなのに。それにアスラン、名前に操を捧げるのもいいけどね、あんまり名前を待たせると愛想尽かされるよ」
「!!」
「…ああもう、愛想なんて尽かさないから。あんまり変なこと考えないでよアスラン」


生真面目すぎるが故に、時々突拍子もないことをしかねないアスランのことだから、キラの言うことを真に受けて強姦まがいのことをしてくる可能性だってある。まったくキラのやつ、アスランを焚き付けるようなことを言わないでほしい。私は今のプラトニックな恋愛で全然平気だっていうのに。
酷くショックを受けたような表情をしたアスランを半眼で見やった私は、彼が変な行動に出ない内に釘を刺した。会話しかしていないのに疲れた気がするのは何故だろう。


「ね、名前、一回僕とセックスしてみない?」


そしたら一発で僕の方がいいってわからせてあげるのになぁ。あ、一発じゃ終わらないかもしれないけど。
完璧な笑顔でとんでもないことを口にするキラは、相変わらず優しげな顔でにこにこと笑っている。機械音が入りそうな放送禁止用語さえ言わなければ見惚れてしまうほど。

本当に何で私こんなキラとアスランと幼馴染なんだろう。きっとこれから先、学園を卒業してもそれぞれ違う道を歩んでいっても、たとえ誰かと結婚しても、こんな関係がずっと続くのだろう。もしかしたら私とアスランが結婚するまでキラの嫌がらせは続くのか。なんかそれってすごく嫌なんですけど。
日々こんな言い争いを耳元でされちゃあ、精神衛生上よろしくないと思う。最近妙に女の子同士の下ネタに順応出来て、むしろ微笑ましいなぁなんて思っているのもこのせいだ。確かに赤裸々に語られるけれど、キラほどストレートに突っ込むだのセックスだの言う人はいない。耳年増になったらどうしてくれる。

ねぇねぇ名前、と服を引っ張ってくるキラと、必死でそれを止めようとしているアスラン。年中発情期なエロスと童貞の機械オタクに挟まれた私は、どちらの声も無視して書類の紙をぺラリと捲くった。
こんな男達が学園で一位二位を争う人気者なんだから、世の中って理不尽だよなぁと思うのだ。

愛と何とかは地球を救う

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