好きで何が悪い
「ギャー!」
爽やかな早朝の森でシャッター音とマシュラの悲鳴が響き渡る。毎朝の事なのでサーゴは「おやおやもう朝ですか」と目覚まし代わりに目を覚まし、慣れっこになってしまったクータルは寝たままだ。
「もー、寝顔の写メを撮っただけで何で叫ぶかな。」
「バカ野郎、フラッシュされて驚かない奴がいるかよ!しかも勝手に人の寝顔を撮りやがって…!」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。」
「減るわ!俺の貴重な睡眠時間と体力が!」
ギャンギャンと叫ぶようにして怒るマシュラと携帯片手にニヤニヤしているナマエ。そんな二人を寝起きで重いまぶたを擦りながらサーゴは見ていた。
…ナマエはこの世界の住人ではなく、マシュランボーがアニメで放送されていた世界から来た高校生だった。(そして忘れてはいけないのが、彼女はアニメオタクと言うことだ。)
…いきなり空から降ってきて、自分たちを見るなり異常な程に興奮するナマエを見たマシュラは気味悪がったのだが、自分以外の人間に出会えたと喜ぶヤクモを見てしまったら何も言えなくなってしまったためナマエの同行を許しているのだった。
マシュラと口論していたナマエだったがまだ眠そうに瞼を擦るサーゴを見るとニヤリと口の端を上げる。
「はい、寝起きサーゴ激写!」
パシャッという音と共に寝起きのサーゴに強烈なフラッシュ攻撃が炸裂した。…ちなみに彼女の携帯のフラッシュはかなり強烈である。
「ノー!目がぁぁあ!!」
至近距離でモロに目つぶし攻撃を食らってしまったサーゴは、目を押さえて某空飛ぶ城のムスカのように転げ回った。
「もう、大げさだなあ。目玉が潰れたわけじゃないんだから。」
「ユーのせいですよ!!」
「今日も元気ですね、ナマエ。」
サーゴとナマエがそんなやりとりをしていると、今起きたのか小さなあくびをしながらヤクモがこちらに歩いてくる。ヤクモにナマエの不満を言おうとしているマシュラを押しのけてナマエは目を輝かせて彼女の元へと駆け寄った。
「あっ、ヤクモさん!おはようございます。」
「おはようございます、ナマエ。」
「あの、寝起きの可愛らしいヤクモさんを携帯の写真機能で撮ってもいいですか。」
「私をですか?…私でよければ。」
のほほんと人の良い笑みを浮かべるヤクモにナマエはうっとりとした顔になり、マシュラはそんなナマエを押しのけた。(そのままナマエは近くで寝ていたクータルのお腹でバウンドし地面と熱いキッスするハメになった。)
「おま、俺やサーゴの時は許可無く勝手に撮るくせに!」
「ヤクモさんは特別なんじゃい!…願わくばクータル辺りの寝顔も無許可で撮りたかった…!」
「お・ま・え…!」
全く反省の色がないナマエに対するマシュラの怒声が青空に響き渡った。
20100410/おわり
*)ヤクモは特別なんです