ティーカップ









「フロイライン」

若き皇帝は、一人の女性を呼んだ。

彼が「フロイライン」と呼べば、
それはおのずと一人に限られる。

「はい、陛下」

ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ――通称ヒルダである。

「悪いが紅茶を淹れてくれないか」

黄金の糸のような髪をさらりと掻き上げ、若者は言った。
ヒルダは少し目を丸くしながらも、返事をして紅茶を淹れる。

「お持ちいたしました」

「うむ…」

彼はどこか落ち着かない様子だった。
ヒルダは首をかしげる。

「…また、体調を崩されたのでは?」

「いや、頭は冴えているのだ。なんでもない」

ほおづえをつくことさえ華麗な雰囲気を醸し出す彼。
彼女はその華麗さに思わず見入ったが、すぐに首を振り、自我を取り戻した。

「失礼します」

そっと、その白皙の額に手を当てるヒルダ。ラインハルトははっと息をのむ。
それに気付いた彼女は、はじかれたように手を引いた。

「ご、ご無礼をお許しください」

「いや…」

彼は、ヒルダに触れられた場所に手を当て、うつむいた。


数瞬の沈黙。


ヒルダは少し不安げな表情で、沈黙を破った。

「…しかし、やはり熱がおありなのでは?」

「なに?」

支配者の眼光は鋭かった。

「少し、お熱うございました」

ヒルダは、先ほどその白皙の額に触れた手を胸の前で握りしめる。

「大事を取って、お休みになっては…」

「無理を言うな、フロイライン」

若き支配者は、大きく首を振った。

「いま私が休むことはできない。やるべきことが山ほどあるのだ」

そして、冷めかけた紅茶に目線が行き、そのカップを手に取る。

「…おいしい紅茶をありがとう」

その紅茶を口にしたラインハルトは、そう言った。
ヒルダは微笑む。

「それはなによりです」

「上手く淹れたな。フロイラインも一口どうかな」

彼は、落ち着いた動作でヒルダにカップを差し出した。
ヒルダはみるみる赤面した。

「? どうしたフロイライン」

ラインハルトは小首をかしげた。
そして、己のしたことの意味を悟って、思わず音を立ててカップを皿の上に戻すのである。

片手で口元を覆い、恥じ入ってうつむく年相応の若者が、そこにいた。

「よく考えもせず、すまない」

「い、いいえとんでもございませんわ陛下」

ヒルダは火照る頬に手を当てた。
そして、カップに視線を向ける。

「もう冷めてしまっているでしょうし、淹れ直して参ります」

手が震えているのを悟られぬよう、
素早く皿ごと持ち上げ、部屋の外に出る。

本当は、お湯も茶葉も部屋の中にあるのだが、なにせこの若き主席秘書官は動揺していた。

ラインハルトが制止する暇もなく、彼女は扉を閉める。


そして、そのカップに自らも気付かないうちに嫉妬するのだ。


ヒルダはそっと、精緻な文様の入ったカップの縁にキスをした。

ちょうど、あの若者の唇が触れたあたりに。






fin.






ライヒル大好きですw
とはいえ、まだアニメ版をDVDで見てる最中です←
いま..ヤンが死んだあたりですちょうど;

キルヒアイスも大好きですvv
というか、
金髪の覇者も、赤毛の親友も、黒髪の英雄も、蜜色の忠臣も、金銀妖眼の野心家も、義眼の策士も、橙色の猛将も、銀髪の賢臣も、みんな大好きです!
個人的に、ベーネミュンデ公爵夫人とか、エルフリーデさんとか、
ちょっと可哀想な女の人も好きですw

「マインカイザー」を一番綺麗に発音したのは
ロイエンタール元帥だそうですねvvv
カッコいいなあ元帥っvvv(話題それてるし

お目汚し失礼いたしましたoyz


2011.3.9




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