崇拝









「先生、」

「なんだ。・・・・ワガハイは忙しいのだ。早く言え」

「・・・・あの、」

先生の机の前で、うつむく。落ち着かなくて、服の左袖をつかむ。
先生は、いつものように完璧に、その仕事をこなしていた。

「用がないなら出て行け。キサマの姿が視界に入るだけでもうっとうしい」

「・・申し訳、ありません。ですが、しばらく先生の視界にいることをお許しください」

「・・・・・・・・」

先生は手を止め、射貫くような目でこちらを見ている。
神のように厳格な眼光。

「先生に、お聞きしたいことがあるのです」

「・・・・なんだ」

「私の、父のことです」

興が削がれたように、先生は軽くほおづえをついた。

「ふん・・・・御剣信のことか。その年にもなって、父親が恋しいのか?」

「いいえ、そうではありません。ただ・・・・」

「・・・・」

「ただ・・・・、先生から見て父は、どのような存在だったのかと」

先生の瞳の奥に一瞬、何かの色がちらついた。
ただ、なにか暗い色。

「よくは覚えていない・・・・。ただの弁護士だ」

「名前は、しっかりと覚えているのに、ですか」

「・・・・、キサマの父だ。名字がわかればあとは二音だろうが」

「でも父は、あの最後の法廷で、先生に大きな傷を与えた。先生の完璧な経歴に傷をつけたのです。それを・・・・先生がお忘れになるとは思えません」

先生は、右手で左の袖をつかんだ。

「いちいちそんなことは覚えてはいない。御剣信はただの弁護士だ」

先生が、動揺しているときの仕草だ。
目線が泳ぐことも、声が揺らぐこともなく、それが唯一の仕草だが、
何年もそばにいる者にはわかってしまう。

「そう、ですか」

こうなるともう、これ以上は話を聞けない。
口を割る気はないようだから。

「用が済んだなら、食事の準備でも手伝ってこい。メイがカレーを作ると気合いを入れていた。・・・・くれぐれも邪魔をせぬ程度に」

「はい、先生」

「・・・・勉学に励む時間が必要なら、そうしてもよい」

「はい、先生」

失礼します。
頭を下げて、きびすを返す。

「御剣」

呼び止められる。
振り返るより早く、先生は二の句を継いだ。

「体調管理も完璧にこなせないようでは、狩魔の名が廃る。キサマも狩魔流を極める者ならば、他人のことよりまず自分自身を管理しろ」

はっとする。
気づかれていた。

熱があるそぶりなんて、見せなかったはずなのに。

「はい、先生」

いつか先生のような検事になる。
ずっと前からそう思っていたような錯覚が私を襲う。


Fin.





あれ、なんかカルミツみたいじゃないですか(笑)
ついいつものCP小説書いてるノリでいつのまにかChaosなことに(^^;)
でも師弟愛です! 師弟愛だと言い張ります!((

Diaryにupしてたのを持って来ました。
御剣と狩魔の因縁が好きすぎてもう…御剣かわいそうすぎてもう…。

ミツメイ好きです(関係ない
このあと御剣がメイを手伝いにいてくれたらなぁと思ってます。

乱文失礼しました。


2012.12.8 (執筆:2011.9.14)




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