罪深き夢









夢だからなにをしてもいいと。

なぜかそう思った。



暗い森の中で、彼と二人、たき火を前にして座っている。

「ねえ、オルハ」

夢だったから、自分から話題を振るのも不自然じゃない。
夢ってそんなものだ。起きてから考えたら矛盾だらけの会話がまかり通っている。

オルハは視線だけこちらを向く。

「キス、して」

夢だったから、なんの考えもなしに言った。
ふとオルハを見たらそう言ってしまっただけだ。夢だから。

「…ああ」

オルハは軽くうなずいて、こちらを向いた。
目を閉じる。後頭部を抱えられ、重ねるだけの優しいキスをする。

彼は数瞬ののちにそっと離れようとした。

彼の服にすがりつく。離れようとした唇を、ほんの少し舌を出して、
ちろっと舐める。

「ん、」

くぐもった声が聞こえた。
目を開かなくても、彼が眉をひそめたのが分かった。

あきれたように彼は、離れるのをやめた。
そして同じように舌を出し、舌先を舐める。

「んッ、」

背筋が震えた。

その隙を突かれ、舌が唇をなぞり、それを割って侵入してきた。
彼の服をぎゅっと握りしめる。歯列を舌でなぞられ、心臓が震えた。

一瞬ごとに、口づけはより深くなっていく。
互いの舌をつなぎ合わせ、荒い息をして、唾液が滴るのも構わずに。

文字では形容しがたい、鼻にかかった声が漏れる。

オルハの指先が、頬を、首筋を、肩を、胸を、腹を、脇腹を、そして腰を滑る。
ぐっと力強く腰を抱かれる。

彼の首筋に腕を回す。されるがまま、口内を蹂躙される。

荒い息をする。そろそろ鼻呼吸では追いつかなくなってきた。
酸欠でくらくらする。でも離れたくない。

必死で意識をつなぎ、舌を絡ませる。
オルハはそれに気づいて、ちゅっと音を立てて唇を離した。

こくっと2人分の唾液を飲み干し、てらてらと光る唇と口の端を手の甲でぬぐう彼。

「…大丈夫か」

わずかに肩を上下させて、彼が問う。

「ん…」

呼吸と鼓動が落ち着くのを待つ。

唾液は飲んだのだが、唇をぬぐう余裕はなかった。
オルハが代わりに指先で舐めとってくれた。

そんな些細な行動にも胸が高鳴る。

「オル、ハ…もう一回…」

キスをねだる。オルハは困ったように視線を落としながらも、うなずいた。

唇が重なる。


そして意識は融かされ、不透明になっていく。
オルハにもたれかかり、幸せの中で自分は目を閉じた。



はっと目が覚める。

そこは森の中だったが、もちろんあたりにたき火のあとはなく、葉の隙間から木漏れ日が差してほの明るかった。

「オルハ…」

辺りを見回すと、すぐ隣には木の幹に背をもたせかけて眠るオルハがいた。
急ぐ任務ではない。もうしばらく寝かせておいてあげよう。

あんな夢を見てしまった手前、こちらから話しかけるのは気まずいし。

身支度を整え、出立の準備をする。

「…、」

オルハが身じろぎ、薄くまぶたを開いた。
空を見上げ、もう朝かというような顔で支度を始める。


「ねえ、オルハ」


そう声をかけると、オルハはハッとこちらを見る。
その鋭い瞳が見開かれて……マナはその光に捉えられた。


「キス、して」


その鋭い瞳がさらに見開かれて……あのオルハが、表情を変えた。


「…ああ」


朝の光が髪を柔らかく照らして。回された腕はたくましい戦士のもの。ふっと唇に触れる吐息は、悩ましげで。


(ああ、私…)


まだ夢の中みたい…。



夢だからなにをしてもいいと。

そう思った。




fin.




久々のマグカル夢…!
あああやっぱりオルハカッコいいですよね!!!

マグカルやオルハたちに対する情熱はこれっぽっちも冷めていません。
ただ時間がないだけなのです…Oyz

こんな亀ですが
なにとぞ、これからもよろしくお願いいたします!


2012.8.27


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