夢短編 | ナノ
佐倉麻里は憂鬱な気持ちで家に向かう。
数ヶ月前にいろいろあってこの『世界』に、大好きな漫画『家庭教師ヒットマンREBORN!』の世界にやってきた。
そして並森中学に入って、それもツナたちのいるクラスに入れて、仲良くなれて嬉しかった。
「どうして……」
一緒に過ごすうちに本気でツナに恋をしてしまった。
迷ったけれど告白をした。
そして、フラれた。
彼が京子ちゃんのことを好いてるって知ってたはずだった。
それでも、という気持ちで告白したはずだった。
なのに、玉砕した後私を支配したのは怒りだった。
まるで『夢小説』のようなことが起きてたのだから、叶うはずだと、そうでなければおかしいと思ってしまった。
それこそ、その思い込みこそがおかしいと酷いことをしてしまったと気付いた時には手遅れだった。
マンションの部屋のある辺りまで来て、アレ?と思う。
何故か隣の部屋の高橋安希が私の部屋の玄関前に立っていた。
彼女は不良でよく学校サボってて、噂じゃしょっちゅう問題を起こしてるとか。
あんまり話したことはないのだけれど、どうかしたのだろうか?
「高橋さん?うちの前でどうしたの」
「ちょっくら用事があってな」
「私に?」
「それ以外に誰がいるっつーの。でさ」
高橋安希は睨むように私を見てくる。
「俺。お前が沢田綱吉に告白するとこ見てたんだけど」
「えっ?」
「なのに、お前は沢田に苛められたという。それって嘘だよな」
「な、なんのことよ……」
ウソ。やばいヤバい。頭の中で警報が成る。
「だーかーらー、いい加減にしろっつってんの?分かる?俺は滅茶苦茶ムカついてんだ」
「あなたには関係ない!」
怒気の含まれた声に内容に、カッとして声をあらげる。
すると、
「確かにそうだがな。大好きなキャラクター達の喧嘩なんて嫌に決まってるだろ」
なんて言ってきた。
大好きなキャラクター?
まさか高橋安希がREBORN!を知ってるはずはないし。
「意味分かんない」
「ふーん。分かっかと思ったけど分かんねーのか」
そっかそっかと勝手に頷いて高橋安希は言葉を続ける。
「まぁとりあえず、お前ってスッゲエ冷たい奴だな。好きな奴あんなに追い詰めんなんてな。それとも趣味?気味悪」
「違う!そんなんじゃ、そんなのじゃない。ただ私は……」
私は………
「今あるのが現実だぜ」
「だから…その……、あーもう。どうすればいいのよぉ」
目の前にいる彼女は何言いたいのか意味分かんないし、それに今更どうしろと?
「まだ間に合うかもだぜ。沢田綱吉は驚くぐらい甘い人間だからな」
(そんなの…知ってるし)
被害者ぶってもかーいくねーぞ
(本当はただ、またみんなで仲良くしたいのに)