夢短編 | ナノ
どうにも苛々してムカついて頭がぐちゃぐちゃで嫌で嫌で仕方ない。
「クソッ」
(これも全て十代目のせいだ)
信じていたのに、尊敬していたのに、忠誠を誓っていたのに、裏切られた。
獄寺隼人にはそうとしか考えられない。
「何でだよっ!」
それに俺は十代目を殴ってしまった、蹴ってしまった、なんてことをしたのだろうか?
十代目は抵抗しなかった。
どうしてかなんて分からないけれど。
(なのに、何で、俺は)
もう、自分の気持ちさえよく分からない。
「よぉ。随分と荒れてんじゃねーか。獄寺」
「高橋か」
「そーそー」
声の聞こえる方向を向くと時々話をする女がいた。
「おい。今苛ついてんだ。てめえの相手してる暇なんかないんだよ」
「おーコワッ。チョイと聞きてーことがあんだけなんだけど」
言葉と裏腹に対して怖がってないようだ。
コイツはコロコロ表情を変える癖に本心を見せない時があるから厄介だ。
「何だよ」
「確か十代目だっけ?沢田綱吉と喧嘩してんだって聞いてさ。そいつのことをべた褒めしてたからさ。おっどろいたぜ」
何を言われたか分かった瞬間には体が動いてた。
「いってぇ」
「高橋にゃ関係ないだろうがっ!」
高橋は頬っぺたを押さえる。
「あーもー!女の顔殴る奴があるか!」
言われてハッとする。
俺を睨むようにして高橋は言葉を続ける。
「ん?何が違うのさ。てめえが沢田綱吉を『イジメ』てる理由じゃねーか。噂だけどさ。ああ、それとも何か?ただムシャクシャしてただけか」
「俺は、ただ……。そう悪いのは十代目なんだ……」
別に彼女が怖い訳ではないが、言われたことに上手く返事が出来ない。
「裏切ったのはどっちなんだろうなぁ?」
「知るか」
高橋は不意にニヤリと笑ったかと思うといきなり殴りかかってきた。
「てめっ、何しやがる!」
「仕返し?つー訳でもう一発」
二度目は咄嗟に手でかばった。
それに高橋はムッとした顔を作ってから、まぁいいかとばかりに笑った。
「よしっ。これでフィフティフィフティ。恨みっこなしな」
「何処が五分五分だってんだ」
口で悪態をつきながら別のことを考える。
俺が十代目をイジメてる?
裏切った?
(逆じゃねぇのかよ)
しかし、己の知る彼は甘くて優しくて、だから…………。
喧嘩?よっしゃ買うぜ
(そういやアイツ結局何の用だったんだ?)