夢短編 | ナノ
「おー、ゼッケイだな」
風に靡く金色に一瞬目が奪われた。
校則よりずっと短く折られたスカートに腰で巻かれたセーターにはだけさせた胸元、それは雲雀に見つかったら咬み殺されること必至だ。
山本武は直ぐにそれどころじゃないと気づき声をかける。
「ちょそこアブねーって!」
少女が立っているのは屋上の淵、フェンスを越えた場所。
一歩足を滑らせでもしたら落ちてしまう。
「ヘーキヘーキ。んなミスしねぇよ」
自分の声に振り向いてニッと笑ったかと思うと彼女はまた後ろを向き空を見上げた。
そう言えば、彼処は昔自分が自殺しようとした場所だったと思えば焦りが湧いてくる。
けれど、少女はただ黙っていてどうすればいいか分からない。
「なぁ、もし今俺がここから飛び降りんじゃん。そしたら山本武、お前のセイになるよな」
暫く口を閉じていた後、不意に少女が放った言葉にギョッとする。
(飛び降りる?俺のせい?)
「は。何でなのな?」
冗談キツいぜー、なんて言いつつも己の顔がひきつっているのが分かる。
「だって最近よく暴力ふってんだろ。んでもってここにいんのは俺ら二人。事実がどーだろーが関係ねーな。周りはそうとる」
「なんだそりゃ」
頭のなかでそうなるだろうなと理解出来ているのと同時に、冤罪だと文句を言いたくなってきた。
(ツナじゃねぇんだし)
頭に浮かんだ名前に首を振る。
それは最近、とある少女をイジメてると噂の少年で、己の親友だったヤツ。
違う、そんな人じゃない、何度思っただろう。
だが何度も自分は現場を見たんだ。
本人は違うと言っているが他に何がある?
何より理由があるのなら話してくれれば良かったんだ。
親友だと思ってたのは自分だけらしい、そう思い知らされた。
ギリッと歯軋りをしたところで少女の声がした。
「ダチを信じなかったのはてめえだろ?今更なに言ってんだよ」
まるで心を読んだかのように少女は俺の目を射抜く。
「チゲーのか」
違うと言い切ることが出来なかった。
気付いたら血が出てしまうほど強く拳を握っていた。
以前俺が自殺しようとした時に命懸けで助けてくれたのがツナだった。
「後悔すんなら動きぁいいじゃん。あっ、因みに普通は自殺と取ると思うぜー。引っ掛かったな」
いつの間にかフェンスを越えてたのか彼女は俺の隣を通って屋上から出ていった。
ガンッ。
思いっきり壁を叩いて見たけれど心はぜんぜん晴れない。
「どうすりゃいいのかなんて分かんねーのな」
(なぁ、……ツナ)
誰が自殺なんざするかよ
(もう一度話してみっかな)