夢短編 | ナノ





何て名前だったかと聞こうとすると甘ったるい声が聞こえた。

「ゆーしの名前わぁ、おしどりじゃあなくてぇ忍足だよぉ」

名前は確か、奈倉加美だったかと思い出す。

「あぁ、そんなだったかもね」

「ちなみにぃ、私のぉ名前はぁ奈倉加美って言うの。えぇっと」

「月島美優」

「美優ちゃんねぇ。よろしくぅ」

「うん」

心の中で、いろいろとね、って呟いた。

それと一瞬、奈倉の顔が歪んでいたのを見た。

「俺は向日岳人だ。よろしくな」

何かおかっぱ君も自己紹介してきて他の人もそれに続いた。

「あーん。俺は跡部景吾だ」

たぶん、泣きボクロの人は跡部財閥の御曹司だと思う。

もらった資料の中にあった名前な気がするし。

「……樺地宗弘です。…ウス」

「俺は芥川滋郎だC〜。よろしくね」

「宍戸亮だ。困ったことがあったら言ってくれよ」

とりあえずこの人たちの名前は覚えておいた方がいいかもしれない。

「うん」

そういえば、ワカはいない。

ちょっと残念だ。

「あの子は?」

さりげなく離れたところに座る女の子に目を向ける。

その人の周りだけ雰囲気が違ったし、何より彼女が例の一番の標的だから。

すると、困惑と怒気、あとは悲しみとか、人によって違う感情が辺りを占めた。

何かあるということか。

面白いことだといいなぁ。〓
「クソクソ。アイツはサイテーな奴なんだよ」

「高梨先輩は加美先輩を苛めてるんだ」

責めるように、イライラを吐き出すように向日さんと鳳君は声を出した。

一瞬、高梨と呼ばれた彼女がボクをじっと見て、目を反らした。

「苛め?」

「俺らのマネージャーなんだけど仕事を押し付けたり、叩いたり他にもいろいろな。激ダサだぜ」

宍戸さんも忌々しそうに言った。

というかやーな空気。

馴れてるけどね。

あれ?でも、

「高梨さん?だかの方が怪我してるよ。どーして?」



話を聞いてみるとなんだかややこしいことになってると分かった。

「つまり、奈倉さんを高梨さんが苛めてて、その制裁を君たちがやってる?」

奈倉加美を高梨恵美が苛めてる、そこまでだけなら別に興味は湧かない。

気になるのはディアマンテファミリーのボスの娘である高梨恵美が制裁を受けているという点だ。

奈倉加美は部下の娘だったはず。

それを黙って見過ごすのかな?

例え苛められたとしてもさ、立場ってもんがあるだろうし。

もしかして、親方様がツナにぃや奈菜さんにマフィアだって黙っていたようにどちらかの親は娘に伝えていないとか。

奈倉は幹部のなかでも力をつけてきている重要人物。

これはもしかして、内部抗争の可能性とか、実権を握っているのは実は奈倉だったとか……って考えすぎだろうか。

それとも、何か心理的な作戦とか。

苛められっ子、苛めっ子を演出することで何かを狙って…………

……同情を引いて何かしようとか?

やっぱり、考えすぎだな。

何かやらせるにしても、一般人の中学生。

それに、自分から殴られたいだなんて人、そうそういないし。

思いっきり何かが引っ掛かるのを覚えとこうか。



「月島さん?どうしたの?」

鳳君の言葉ではっとする。

「あーうん。苛めかっこわるいって言葉知らないのかな〜って思ってて」

何かの本にそう書いてあった気がする。

「さあな」

跡部さんがどうでもいい風に相づちを打った。

いや、どうでもいい訳じゃないはず。

部長らしいし、何より跡部財閥の御曹司だし。

読心術が分かれば楽なのに。






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