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こんにちは、さようなら








学校の宿題をしていたらぐいっと後ろから体が引っ張られる感覚がした。

後ろを向いても誰もいない。リボーンかランボ、イーピン辺りだと思っていたのだが。
なんだ、気のせいか。そう思い宿題の続きに取り組もうとしたら目の前が一瞬で白煙に包まれた。
そして先程の比じゃない強さで体が持っていかれるように引っ張られる。

――― あ、コレ十年バズーカじゃね?

気付いたときにはもうすでに私は何処かに連れていかれていた。







突然の出来事できつくつむってしまった目をゆっくりと開けば、みたことのある部屋にいた。
黒いふちの鏡、窓際のロッキングチェア。ベッドの上には乱雑に置かれたファーの付いたヴァリアーの隊服。ここ、前世のスクアーロだった時の部屋だ。
カレンダーに目をやれば、私が飛ばされた日付から丁度十年後。

「なんで、」

声を出した瞬間思わず口を押さえる。自分の声が思った以上に低かった。
慌てて鏡の前まで移動する。長い銀色の髪と鋭い目つき、精悍な顔立ちの美形がワイシャツの第二ボタンまで開けた状態で口を大きく開けながら映っていた。

なんで自分、スクアーロになってんの?左手があるところを見れば私がスクアーロだった時の体だろう。
額に手を当て項垂れる。ど、どうしてここに来たんだ。項垂れた時に視界の端に紙の束がうつった。どうやら何かの書類。提出期限は今日。・・・今日?

「あ゛ぁ゛あ!!」

自分が中途半端にワイシャツとズボンを着てるだけの理由が分かった。これ、提出するはずだったんだ。
急いで隊服のコートを羽織ってベルトを締める。分厚い紙の束を抱え、自分の部屋をガタァアン!と大きな音をたてて走って出ていった。

「あ、はよー母さん。朝飯は?」

「ルッスーリアに作ってもらえ!」

「フレンチトースト食いてえ」

「ルッスーリアに作ってもらえええええ!!」

猛スピードで廊下を駆けていたら、途中ですれ違ったベルが並走しながらしつこく付きまとってきた。
朝食作ってる暇ねえから!私は魔王の居城に向かうんだよ畜生!
ベルをふり払ってものの数十秒で魔王の城という名のザンザスの執務室についた。肩を上下させて扉をノックする。

「ボスー」

「入れ」

扉を開けたらビールジョッキが飛んできた。

「う゛ぉ゛お゛っ!?」

すんでのところでそれをよければビールジョッキは絨毯に鈍い音をたてて落ち、中身が零れる。珍しい、ザンザスがビール飲んでやがる。
ゆっくり顔をあげればザンザスは私の事を険しい表情で睨んできていた。

「誰だ」

「は?俺だろぉ」

しらばっくれるに限る。一瞬焦った。やはり超直感は伊達じゃない。今となれば自分にもあるけれど。
しらを切った俺なんて簡単に見透かしていたのか、もう一度同じ言葉を俺に向かって告げた。

「誰だ」

小さくうつむく。ばれている。完全に。
中にいる人間が誰だかはわかっていないものの、体と精神が一致していないことを見透かされていた。
私はゆっくり顔をあげて自身を嘲るように笑った。


「誰だろうね」


その瞬間、私が言葉を言い終わるのを待っていたかのように白煙が私を包んだ。ここに来た時と同じ。
ザンザスが何か口を動かしているのが見える。煙を片手ではらって読唇術で読み取った。


『また今度な』


それはいつの話だろう。わかるのはいつのことだろう。
再び私は強く引っ張られていった。







『無限の邂逅』

(巡る)

(廻る)

(めぐる)

(メグル)


(また会おう)
(XANXUS・・・)





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