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じゃあねーと誕生日会にお呼ばれされてるらしいいーちゃんと別れてから歩き出した人識の隣を歩く。
たぶん目的地なんてないだろう。
適当に河川敷をうろちょろしているだけで。
ああ眠い。
「まったくひ弱でか弱き愛らしい乙女に徹夜させるだなんて人識は鬼だー」
「かはは。だーれがひ弱でか弱くて愛らしいんだよ」
「ボクに決まってる。あ、そーいやボクそろそろ人識の背超えそー。やったね人識ちっちゃ〜い」
「なっ、麗織そりゃ禁句だろ」
「んー?なんのことやらボクにはさっぱりだよ」
「たあっく、傑作だぜ」
「戯言でしょ」
ねぇお二人さん?と目の前に現れた男女二人組に問い掛ける。
“きっと”二人ともプロのプレイヤー、若しくはそれに類する存在だと勘と経験が告げてくる。
袴に稽古着、和式の眼鏡、鉢巻で縛った髪に草履という如何にもな武道の恰好をしている。
その手に持つのはそれぞれ薙刀と弓矢だ。
それぞれ構えてこそいないけど隙のない状態。
ってあれ?
何か引っ掛かるような。
和服、薙刀、弓矢、兄妹…。
そうか『零崎双識の人間試験』か。
早蕨三兄弟の二人か。
たぶん人識がその妹殺して復讐に走る兄二人のお話。
新しい女の零崎が生まれるお話。
双識のお兄ちゃんが死んでしまうお話。
「マジで戯言だよ。やんなるなあ」
呟いて思考する。
原作では人識がこの兄を見逃したから、憎悪を生んだ。
殺してしまえば零だったのに。
若しくは畏怖と恐怖が残っただけのことでそれこそが零崎一賊だというのに。
「かはは。なーんの用だよ」
「ボクらはこれから寝床を確保しに行くんだよ」
やっぱりこれは傑作だ。
零(レイ)にしちゃおう。
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