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「じゃあ、美優は俺の娘で間違いないんだな」
嬉しそうな、ほっとしたような家光の声がした。
その内容が気になって、そっと声の聞こえる部屋の扉のすぐ近くの壁に寄りかかる。
聞いたら後悔する、そんな気はしたのだけれど、それを無視する。
だって、聞いたら後悔ってことはつまり、ボクにとってそこそこ重大なことだということだ。
耳を澄ますと家光とリボーンの声が聞こえてくる。
「そういうことだ。DNA判定に間違いがなかったらな」
聞こえてくることから判断するなら、リボーンか誰かがボクが本当に家光の子供かと疑問を抱いて調べたってことかな。
そりゃ、そうだ。
ボクは前世と姿が同じだから、家光にも奈々さんにも似てない。
綱吉とも、なんて言わずもがな。
それに、似てない以前に目の色も髪の色も違う。
変に思われるのも、当然だ。
むしろ、DNA判定で親子関係がはっきりしたってことの方が不思議なくらい。
意味深なリボーンの言葉はそれを指しているのだろう。
「間違いなんてあるのか?」
「これを出した科学者は絶対にねえっつってたな。念のため何度かやり直してもらったが結果は同じだ」
「じゃあ、なぜ?」
リボーンはどこか言い辛そうに、家光は苛立ちがちに話す。
これは、あれか。
リボーンがまるでボクを否定するかのようなことを言おうとしているかもしれないからって怒ってくれてるのか。
ボクはそこそこ『愛されて』はいるのだろう。たぶん。
「憑依弾って知ってるよな」
「確か、エストラーネオとか言うところが作った禁弾だろう。それがどうした?」
「人の心を操り、のっとることは可能だってことだ。時宮っつー操想術士だって存在するしな」
「何が、言いたい!」
家光は激昂したように大声を出す。
聞いているくせに、リボーンの言いたい事には気づいているのだろう。
リボーンは感情を押し殺したように淡々と話し出した。
それは、言わなきゃならないけど、言いたくないけれど、受け入れたくないけれど、言うしかないとでもいうかのように。
「あいつは、美優は、誰かに乗っ取られているかもしれねえってことだ。平和の中で暮らしてきてて、あの年で、たった四年もしないうちにあんなに知識を持ち、あんな思考をするだなんておかしいってことぐらい分かるだろ。それに、あの容姿。まるで、初代の血どころかお前の血さえ、まったく受け継いでないようじゃねーか。何かのせいで、変わってしまったといった方がしっくりくる。そういゆ可能性もあるってことだ」
ボクは、それを扉越しにどこか冷えた心で聞いていた。
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