損な役回りはいつもの事 攘夷銀←真選組+万事屋

ほんと、ついてない。
俺がこういう役回りなのは、割といつもの事だけど。
でも、今回のはちょっと違うと思うっていうか。
隣から溢れ出る不機嫌オーラに、つい身体を固くしてしまう。
ほらあれ、あれみたいな。
手と足が同じ動きしてますよ的な。
場数だけは踏んできただろって言われても、俺は監察だからやっぱりほら。
「…………」
「……あ"?」
「ヒィッ!」
恐る恐る、チラリと隣を盗み見ようとしたら、副長顔負けの瞳孔開いた瞳を向けられた。
情けない声が出たけど、仕方ない。
「どうかしたのか?」
俺の声に気付いて振り返ってくれた局長に、ぶんぶんと首が取れるんじゃないかってくらいに勢いよく横に首を振った。
隣で俺を睨んでる沖田隊長の瞳が余計な事を言うなって言ってるから。
いつもは地味だの居ても気付かなかっただの言うのに、こういう時は直ぐに気付くんだから。
「そうか?」
何でもないと首を振る俺に、局長はあっさりと前を向いた。
人を疑わないのは局長の良いところでもあるが、今みたいな時は気付けよって叫びたくなる。
「………<はぁ…>」
まぁ、沖田隊長が殺気立つのも分からなくもない。
だって、そんなのは今更だ。
旦那に会いたい、なんて。
特に新八君は桂や高杉一派、今の旦那の部下らしき人物達にと釘を打たれてるって言ってたのに。
神楽ちゃんに関しては、旦那本人に言われたんだっけ。自業自得とはいえ、それはキツイなぁ。
だって俺達、基本的にあの人からは庇護され続けてきたから。
怒鳴りあったり殴られたり冷たくされたりしても、最後にはしょうがないなぁって笑ってくれるのが旦那だったから。
だからって今回も許してもらえるかって言えばそうじゃないし。
今になってこんな話が出たのも、これだけ時間が経ったら許してくれるだろうっていう考え。
そんな、魂胆が見え見えな考えに、沖田隊長が怒るのも無理は無い。
いつもだったら面白おかしく引っ掻き回すんだろうけど、今回のは駄目だ。
これ以上嫌われる展開しか想像できないって、俺でも分かるのに。
だから、今回のこれは止めた方がいいって言ったんだ俺は。
特に、沖田隊長を誘うのは止めた方がいいって。
あの事に関して、沖田隊長はまだ新八君達を許してない。
自分が知らない間に慕ってた人物が理不尽に追い出されたってなれば、そりゃあ怒るよね。
沖田隊長は、旦那の事を忘れてなかったんだから。
旦那呼びだったから誰も気付かなかったけど、俺達が金時の旦那の話題を出す度に首を傾げてたし。
自分はずっと覚えてたのに勝手に悪役にして追い出されて、更には探すなって局長命令まで出されて。
彼等を敵に回したくないっていう副長達の考えも理解出来るけど、納得出来るかって言われれば話は別だろうし。
それを、そろそろ許してくれるだろうから会いに行くぞ、なんて。
「あ、」
うわぁ~、見付けちゃった。
周りに居る人達に露骨に睨まれてるし。
ほら、やっぱりそうじゃん。
「          」
旦那の瞳に、もう俺達は映ってない。
あ~あ…、これ完璧に俺も共犯って思われてるやつだよね。
監察だし、俺が探り当てたとかって思われてたりして。
俺、ちゃんと止めたのに。
「……はぁ…」
本当、ついてないなぁ…。


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