当然だと思い込んでいた 攘夷銀←神楽

銀ちゃんに会いたい。
ずっと、そう思ってた。
また銀ちゃんと万事屋をやりたかった。
久しぶりに見た銀ちゃんは、片目のとこのシミ付きまた子と一緒だった。
私に気付いたソイツは銀ちゃんの腕に抱きついて、べっと舌を出してきた。
ムカついた。悲しかった。
だから思わず、ソイツを引っ張って銀ちゃんから引き剥がしてた。
「いった!何するんスか、このクソガキッ!」
「銀ちゃんから離れるネ!そこは、そこは私の場所アル!」
私の場所だったのに、コイツが奪ったんだ。
コイツのせいで銀ちゃんは帰ってこないんだ。
そう思って、ソイツの胸ぐらを掴んでいた私の手を、銀ちゃんが止めた。
「何やってんの、お前」
「銀ちゃ…っ!」
私を見る銀ちゃんの瞳はとっても冷たくて、敵を見るような瞳をしていた。
何で、何でそんな瞳で私を見るの?
「別にお前等がした事を許さないとか言うつもりはねぇけどさ、これはお前等が望んだ事だろ?上手くいかなかったからやっぱ前までのがいいってのは可笑しいんじゃね?」
違う、違うよ。
確かにあれは私達が作った物だけど、銀ちゃんが居なくなるとは思わなかったんだ。
“金ちゃん”が壊れたから銀ちゃんを呼んでるわけじゃないんだよ。
銀ちゃんが、いいの。銀ちゃんじゃなきゃダメなんだよ。
酢昆布もガマンするし、ワガママ言ったりしない。卵かけご飯以外も作れるようになるし、だから。
だから、帰ってきてよ。
「また子ちゃんに当たるのはお門違いってやつだろ。………また子ちゃん、大丈夫?」
「あ、全然平気ッス!」
「そ、良かった」
ソイツの髪を撫でる銀ちゃん。
何で、私じゃなくてソイツの頭を撫でてるの?
「次にまた子ちゃん達に手ぇ出したら容赦しねぇから」
行こ、そう言って銀ちゃんが手を差しのべたのは私じゃなくって。
『ほら、帰んぞ』
遅くなったらいつもそう言って私に手を差し出してくれたのに。
たまたま通りかかっただけだって言ってたけど、本当は私を探しに来てくれてたのも分かってた。
それが凄い嬉しくて、胸があったかくて。
いつの間にかそれが当たり前の事になって、銀ちゃんが手を差し出してくれるのは当然だと思ってた。
何をしても最後は笑って許してくれるって。
でも、そうじゃなかった。
「あそこのお店、フルーツタルトが絶品なんスよ!」
「そうなの?でも期間限定のも食べたいし…」
「じゃあ、今日のお昼はスイーツをいっぱい頼まないッスか?スイーツだけをいっぱい食べるって夢だったんスよ!」
「いいのっ!?」
「<勿論ッス!スイーツを大量にって、一人では頼みずらいじゃないッスか。鬼兵隊に女って殆ど居ないから一緒に行く相手も居なかったんスよ>」
「<じゃあ、今日はいっぱい食べよっか>」
「<目指せ、全種制覇ッス!>」
段々と遠くなる銀ちゃんの声。
追いかけたいけど、銀ちゃんはそれを望んでない。
銀ちゃんの隣はもう、私のものじゃなくなっちゃったんだ。
「ぎんちゃ、ん……ぎん、ちゃ……」
ごめんなさい。
最後まで言えなかった言葉は、銀ちゃんに届く事なく地面に落ちた。



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