「さぁ皆さん!今シーズン初のクィディッチの試合がいよいよ始まりました!記念すべき最初の試合はグリフィンドール対スリザリン!スリザリンは新しい選手を二人迎えての初試合となります!シーカーにドラコ・マルフォイ、チェイサーにはチームの紅一点、ラピス・ミリアム!万能な彼女はクィディッチの才能もあるようです!何と言っても彼女は美しい!」
「ジョーダン!」
「じょ、冗談ですよ先生」
リーの解説を聞きながら、ラピスはニンバス二○○一で飛び回った。
クアッフルはアンジェリーナが持っている。
それを追いかけるラピス。
「クアッフルはグリフィンドール、アンジェリーナ・ジョンソンが取りました!が、なんと!ラピス・ミリアムが横から奪いました!電光石火の早業です!」
クアッフルを抱え、態勢を低くして箒の速度を上げる。
アリシアを抜き、飛んできたブラッジャーを避け、ウッドを抜いて、そのままゴールに投げ入れた。
「ゴール!スリザリン先取点!ラピス・ミリアムが決めました!」
わーっ!と観客席が湧いた。
「良いぞラピス!」
マーカスが通りすがりに声をかける。
思っていた以上に身体が動く。
この原動力は、きっと応援してくれている人達だ。
「クアッフルはまたしてもスリザリンへ!キャプテンのマーカス・フリントがゴールへ向かいます!そしてラピス・ミリアムにパス!その前にはケイティ・ベルが立ちふさがる!」
ケイティを抜こうとしたが、なかなか粘り強くマークされてしまった。
グラディスにパスをしようとした時、突然横からグラディスが彼女に体当たりをした。
結構な力だったのだろう、ケイティは態勢を崩してしまう。
「ケイティ・ベル、グラディス・モンタギューに邪魔をされました!」
やはりフェアなプレイは出来ないようだ。
ラピスは、グラディスにパスをするのをやめた。
「ラピス・ミリアム、急に方向転換をしてゴールとは逆方向に向かいます!」
ラピスは遠回りをしてゴールに向かう。
全速力で飛んできたアリシアをかわし、追いかけてくるアンジェリーナを振り払う。
「ゴール!またまたラピス・ミリアムが決めました!素晴らしい動きです!」
観客席が湧き上がる。
「何でパスしなかった!」
グラディスがラピスに詰め寄る。
「フェアなプレイが出来ないのなら、パスはしないと言った筈よ」
スリザリン・チームが嫌われる一番の理由だ。
そんな勝ち方、私は嫌だ。
「クアッフルはグラディス・モンタギューが持っています!それをアンジェリーナ・ジョンソンが追う!ケイティ・ベル、先程の仕返しとばかりに飛びつきます!が、クアッフルはラピス・ミリアムの手へ!アリシア・スピネットが負いますが、ブラッジャーに邪魔をされ――アイタ!ブラッジャーがアリシアの後頭部を直撃!その間にラピス・ミリアムはゴールへ向かいます!そして――ゴール!キャプテンのウッド、ゴールを守れず!」
鼓膜が破れそうな程の歓声。
ラピスの頬は自然と緩む。
「良いぞラピス!」
「次も決めろー!」
再び試合が始まるが、ラピスはクアッフルを追わず、少し上空に移動した。
少し引っかかることがあったのだ。
予想以上にブラッジャーによる攻撃が少ない。
ブラッジャーは自由自在に飛び回り、最も近くにいる選手を無差別に箒から叩き落とそうとする暴れ球。
選手達を叩き落としたくて堪らない筈なのに。
二つのうち、一つのブラッジャーはグリフィンドールの選手に攻撃を仕掛けている。
アリシアはブラッジャーの餌食となってしまったのだが、何故フレッドとジョージがフォローしに来ないのだろう?
彼等の姿も、先程から見かけていない。
上空から全体をを見回す。
それは、直ぐに見付けることが出来た。
ハリーがブラッジャーに追いかけられ、フレッドとジョージがブラッジャーからハリーを守っている。
明らかにおかしい。
双子がブラッジャーを真反対の方向に打っても、ブラッジャーは急に方向を変えてハリーに向かって飛んでくる。
何故ブラッジャーがあんな動きをするの?
誰かが魔法をかけたのだろうか。
しかし、練習で使用した後はマダム・フーチの部屋に鍵をかけて保管されているはずだ。
そこで、グリフィンドールがタイムアウトを取った。
ハリーと双子にブラッジャーのことを聞きたいが、試合中の相手選手との必要以上の接触はタブーとなっている。
「すごいじゃないかラピス!」
チームメンバーが称賛する中、ラピスはグリフィンドール・チームが気になって仕方がない。
「あのブラッジャーは何?」
「知らないよ、僕達は何もしてない」
「ポッターを追い回すなんて、あのブラッジャー気が利くな」
スリザリン・チームは何も仕掛けていない…と思う。
では一体誰が?
アルバスは魔法省に用事があるらしく、今日は学校にいない。
誰か気付いてくれないだろうか。
教員の観客席でスネイプ教授を見付けたが、案の定目を逸らされてしまった。
「ラピス、すごい活躍だよ」
「どうも。貴方はスニッチを見付けたのかしら?」
嬉しそうな表情から一変、ドラコの表情が曇る。
「……これから見付けるところさ」
この様子だと、まだ一度も見付けていないのだろう。
雨が降ってきた為、見付けにくいかもしれない。
グリフィンドールは未だ話し合いを続けている。
試合を中止にするべきだと思う。
しかし、
「試合を再開します!」
試合は続行された。
ハリーはものすごい勢いで空へ舞い上がる。
フレッドとジョージが後を追うのかと思いきや、双子はばらばらの方向へ飛んだ。
「ジョージ!あのブラッジャーはどうするの?」
追いかけながら、彼の背中に叫ぶ。
「ハリーが自分に任せろって言ったんだ!ウッドもそれで納得した!」
「そんなの無茶よ!ハリーが死んでしまうわ!」
ラピスがジョージに追い付く。
「今試合を中止したら、没収試合になるって!ブラッジャー一つでスリザリンに負けたくないんだって、ハリーは言うんだ!無茶だと思うさ!けど、ハリーがそう言うんだから任せるしか、ないっ!」
ジョージがもう一つのブラッジャーを、棍棒でグラディスに向かって打ち込んだ。
ハリーは輪を描き、急降下し、螺旋、じぐざぐ、回転と、見ている方が目が回る程おかしな飛び方をしながらブラッジャーから逃げている。
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