秘密の部屋 | ナノ

▼ 12(02)


「さぁ皆さん!今シーズン初のクィディッチの試合がいよいよ始まりました!記念すべき最初の試合はグリフィンドール対スリザリン!スリザリンは新しい選手を二人迎えての初試合となります!シーカーにドラコ・マルフォイ、チェイサーにはチームの紅一点、ラピス・ミリアム!万能な彼女はクィディッチの才能もあるようです!何と言っても彼女は美しい!」
「ジョーダン!」
「じょ、冗談ですよ先生」

リーの解説を聞きながら、ラピスはニンバス二○○一で飛び回った。
クアッフルはアンジェリーナが持っている。
それを追いかけるラピス。

「クアッフルはグリフィンドール、アンジェリーナ・ジョンソンが取りました!が、なんと!ラピス・ミリアムが横から奪いました!電光石火の早業です!」

クアッフルを抱え、態勢を低くして箒の速度を上げる。
アリシアを抜き、飛んできたブラッジャーを避け、ウッドを抜いて、そのままゴールに投げ入れた。

「ゴール!スリザリン先取点!ラピス・ミリアムが決めました!」

わーっ!と観客席が湧いた。

「良いぞラピス!」

マーカスが通りすがりに声をかける。
思っていた以上に身体が動く。
この原動力は、きっと応援してくれている人達だ。

「クアッフルはまたしてもスリザリンへ!キャプテンのマーカス・フリントがゴールへ向かいます!そしてラピス・ミリアムにパス!その前にはケイティ・ベルが立ちふさがる!」

ケイティを抜こうとしたが、なかなか粘り強くマークされてしまった。
グラディスにパスをしようとした時、突然横からグラディスが彼女に体当たりをした。
結構な力だったのだろう、ケイティは態勢を崩してしまう。

「ケイティ・ベル、グラディス・モンタギューに邪魔をされました!」

やはりフェアなプレイは出来ないようだ。
ラピスは、グラディスにパスをするのをやめた。

「ラピス・ミリアム、急に方向転換をしてゴールとは逆方向に向かいます!」

ラピスは遠回りをしてゴールに向かう。
全速力で飛んできたアリシアをかわし、追いかけてくるアンジェリーナを振り払う。

「ゴール!またまたラピス・ミリアムが決めました!素晴らしい動きです!」

観客席が湧き上がる。

「何でパスしなかった!」

グラディスがラピスに詰め寄る。

「フェアなプレイが出来ないのなら、パスはしないと言った筈よ」

スリザリン・チームが嫌われる一番の理由だ。
そんな勝ち方、私は嫌だ。

「クアッフルはグラディス・モンタギューが持っています!それをアンジェリーナ・ジョンソンが追う!ケイティ・ベル、先程の仕返しとばかりに飛びつきます!が、クアッフルはラピス・ミリアムの手へ!アリシア・スピネットが負いますが、ブラッジャーに邪魔をされ――アイタ!ブラッジャーがアリシアの後頭部を直撃!その間にラピス・ミリアムはゴールへ向かいます!そして――ゴール!キャプテンのウッド、ゴールを守れず!」

鼓膜が破れそうな程の歓声。
ラピスの頬は自然と緩む。

「良いぞラピス!」
「次も決めろー!」

再び試合が始まるが、ラピスはクアッフルを追わず、少し上空に移動した。
少し引っかかることがあったのだ。
予想以上にブラッジャーによる攻撃が少ない。
ブラッジャーは自由自在に飛び回り、最も近くにいる選手を無差別に箒から叩き落とそうとする暴れ球。
選手達を叩き落としたくて堪らない筈なのに。

二つのうち、一つのブラッジャーはグリフィンドールの選手に攻撃を仕掛けている。
アリシアはブラッジャーの餌食となってしまったのだが、何故フレッドとジョージがフォローしに来ないのだろう?
彼等の姿も、先程から見かけていない。
上空から全体をを見回す。
それは、直ぐに見付けることが出来た。
ハリーがブラッジャーに追いかけられ、フレッドとジョージがブラッジャーからハリーを守っている。
明らかにおかしい。
双子がブラッジャーを真反対の方向に打っても、ブラッジャーは急に方向を変えてハリーに向かって飛んでくる。
何故ブラッジャーがあんな動きをするの?
誰かが魔法をかけたのだろうか。
しかし、練習で使用した後はマダム・フーチの部屋に鍵をかけて保管されているはずだ。
そこで、グリフィンドールがタイムアウトを取った。
ハリーと双子にブラッジャーのことを聞きたいが、試合中の相手選手との必要以上の接触はタブーとなっている。

「すごいじゃないかラピス!」

チームメンバーが称賛する中、ラピスはグリフィンドール・チームが気になって仕方がない。

「あのブラッジャーは何?」
「知らないよ、僕達は何もしてない」
「ポッターを追い回すなんて、あのブラッジャー気が利くな」

スリザリン・チームは何も仕掛けていない…と思う。
では一体誰が?
アルバスは魔法省に用事があるらしく、今日は学校にいない。
誰か気付いてくれないだろうか。
教員の観客席でスネイプ教授を見付けたが、案の定目を逸らされてしまった。

「ラピス、すごい活躍だよ」
「どうも。貴方はスニッチを見付けたのかしら?」

嬉しそうな表情から一変、ドラコの表情が曇る。

「……これから見付けるところさ」

この様子だと、まだ一度も見付けていないのだろう。
雨が降ってきた為、見付けにくいかもしれない。
グリフィンドールは未だ話し合いを続けている。
試合を中止にするべきだと思う。
しかし、

「試合を再開します!」

試合は続行された。
ハリーはものすごい勢いで空へ舞い上がる。
フレッドとジョージが後を追うのかと思いきや、双子はばらばらの方向へ飛んだ。

「ジョージ!あのブラッジャーはどうするの?」

追いかけながら、彼の背中に叫ぶ。

「ハリーが自分に任せろって言ったんだ!ウッドもそれで納得した!」
「そんなの無茶よ!ハリーが死んでしまうわ!」

ラピスがジョージに追い付く。

「今試合を中止したら、没収試合になるって!ブラッジャー一つでスリザリンに負けたくないんだって、ハリーは言うんだ!無茶だと思うさ!けど、ハリーがそう言うんだから任せるしか、ないっ!」

ジョージがもう一つのブラッジャーを、棍棒でグラディスに向かって打ち込んだ。

ハリーは輪を描き、急降下し、螺旋、じぐざぐ、回転と、見ている方が目が回る程おかしな飛び方をしながらブラッジャーから逃げている。

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