集合

二話・集合

side幸村

先ほど下された命には、いまいる所属を離れ新たな小隊として活動するとあった。私は大佐のいる指令室を出た後、とりあえずいままでの所属先であった陸軍前線部隊の隊舎へ向かう。隊は、なんだかいつもより騒がしい様子であった。近くの二等兵に問う。

「何の騒ぎですか?」
「あ!真田一等・・・・いや上等兵!!」

その声に全員がこちらを振り向いた。人々の群れの中から四人の人物が現れる。作戦部所属の石田三成曹長とその右腕である島左近軍曹、そして研究部所属の直江兼続曹長と我が前線部隊の前田慶次隊長だ。

「幸村・・・・」

眉間にシワをよせた三成さんと兼続さんが、ぐいぐいと詰め寄ってきた。

「聞いたぞ。上等兵に昇格したそうだな」
「だが、ウェントゥスへ遠征するとか・・・・」
「はい、そのとおりです」

そうか、もうすでに隊舎中、否、各軍部全ての知るところであったのか。

「皆さん、そんな心配そうなお顔をなさらないでください。指揮官が政宗様なので、たとえ遠征地が敵の真っ只中でも大丈夫です」
「「それが一番心配なんだ!」」

・・・・それはそれは。

side晶馬

「聞いたよ高倉ぁ!」

冠葉に送られて医療部へ戻ったとたん、ガシィッと田蕗先生に手を握られる。田蕗先生は、軍医として最高位と名高い新野大尉の一番弟子で、僕の師でもある。ぎゃーぎゃーと騒ぐ田蕗先生の後ろで、新野先生と僕の先輩衛生兵の善法寺伊作兵長の二人が苦笑いしていた。

「ここを離れて敵の本拠地に潜入するんだってね!他メンバーの命は、これから君が救っていかなければならない。たとえ誰がどんな怪我や病気をしたって、どんなに危ない状況であったって、君だけは生かすことを諦めてはいけないよ」
「・・・・先生」
「うぅ、寂しくなるねぇ」

ぼろぼろと涙を流し始めた。せっかく良いことを言ったのに台無しである。

「田蕗くん、見送りの日は笑顔で送りだましょうね」
「あい、にいのぜんぜい」
「高倉くん、今の田蕗くんの言葉、けっして忘れてはいけないよ」
「は、はい!」

二人は奥の個室に入っていった。ほけーっとそれを見送っていると、善法寺先輩に声をかけられる。

「晶馬ちゃん」
「はい」
「君と一緒にいく鉢屋たち五人は、私と同じ軍事学校の後輩なんだ。いいやつらだからきっと仲良くなれるよ。よろしくね」
「はい、衛生兵として、仲間として、精一杯やってきます」

side竹谷

研究部へ戻る兵助と勘右衛門と別れて、俺たち三人は諜報部の部屋に戻った。一通り昇格のお祝いと遠征のねぎらいを受けた後、諜報部のマザーコンピューターにアクセスし、一緒に遠征するメンバーの情報を三人で閲覧する。

「あの三人、たしか双子は高倉っつったな」
「うん、お兄さんが冠葉くん、妹さんが晶馬ちゃん。俺たちと同年だ」

先ほど、晶馬ちゃんとの会話から得た情報だ。三郎がコンピューターのキーボードをタタンと叩く。

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高倉冠葉
16歳
入隊02年目
陸軍後衛部隊所属

狙撃の腕に長ける
射的訓練での命中率97%
入隊直後、対テネブラエ軍との交戦にて、陸軍前衛部隊員を敵の脅威から幾度も救った
妹・高倉晶馬は医療部に所属している
両親・高倉剣山元中尉、千恵美元中尉は、03年前のルクス革命事件において、テロリスト側に味方し、軍を欺いた疑いで現在追跡中
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高倉晶馬
16歳
入隊02年目
陸軍医療部隊所属

新野中尉門下の衛生兵
入隊直後、対テネブラエ軍との交戦にて、大怪我を負った陸軍前衛部隊員の命を多数救っている
兄・高倉冠葉は後衛部隊に所属している
両親・高倉剣山元中尉、千恵美元中尉は、03年前のルクス革命事件において、テロリスト側に味方し、軍を欺いた疑いで現在追跡中
ーーーーーーーーーー

「両親が軍の裏切り者か」
「たしか、末の妹さんは一緒に暮らせなくなって、叔父さんの家に預けてるんだって言ってた。これが原因なのかな」
「なんなんだこの昼ドラみたいに複雑な状況は・・・・」
「つ、次は真田さんって言ったかな」

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真田幸村
18歳
入隊03年目
陸軍前衛部隊所属

各種武器の扱いに長け、近距離戦が得意
訓練にて200人斬りを達成

昨年、対テネブラエ軍との交戦にて、テネブラエ軍カルロス大佐を討ち取る
同年、同盟国フルメン共和国へ援軍として赴き、敵国兵のおよそ半分を一人で相手にした
本年、本国大佐の護衛任務中にテロリスト集団アウラの襲撃にあうも、全員返り討ち
祖父・真田隆幸元少佐、我が軍で少佐にまでなった優秀な軍師であった
父・真田昌幸元少佐、我が軍で少佐にまでなった優秀な軍師であった
兄・真田信之曹長、徳川少佐の隊に所属、妻は本多中尉の娘で狙撃手の稲伍長
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「わ、真田さんってすごい!」
「まさに百戦錬磨の兵、だな」
「へー、あの赤ハチマキさんってすげぇな」
「「「!!」」」

俺たち三人の後ろから、他者の声がした。あわてて振り替えると、そこにいたのは・・・・

「あ、双子の」
「冠葉だ。お前らの上司が入れてくれたぜ」

全く気がつかなかった。データに集中しすぎていたせいか。

「何をしに?」
「これから一緒に任務しようっていうやつらのことを知りたくてさ」

コンコン

「お、また誰か来たようだぞ」

扉を開けると、そこには晶馬ちゃんがいた。

「こんにちは。あの、皆さんが服用してる薬とか、持病とかはあるのかとかを知りたいのですが」
「晶馬」
「あれ、兄貴?」

晶馬ちゃんは、これから俺たちの衛生管理から治療を一人でしなければならない。そのため、メンバーの健康状態をしっておきたいのだろう。晶馬ちゃんを中に入れた数分後、再び扉が叩かれる。

「邪魔するぞ」
「皆さんこんにちは」

偉そうな眼帯の青年と、真田さんだった。

「こちらは我々の隊長になられる伊達准尉です。皆さんと仲良くなりたいらしくて・・・・」
「ゆ、幸村!わしはただ実際に隊員となるやつらの顔をだな!」

コンコン

また扉が鳴った。今日は客がよく来る。「どうぞー」と応えた。開いた扉から入っていきたのは、兵助と勘右衛門である。

「あれ?いっばいいる」
「他メンバーの得意武器を知りたくてさ」
「俺は性格とか」

武器開発員の兵助と、心理学研究者の勘右衛門らしい答えだ。

みんなでデータを閲覧。なんだか不思議な状況だな。

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鉢屋三郎
17歳
入隊02年目
陸軍諜報部隊所属

変装の腕に長ける
入隊直後、対テネブラエ軍との交戦時、敵の基地に潜入し、重要な情報を持ち出す
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不破雷蔵
17歳
入隊02年目
陸軍諜報部隊所属

絶対記憶能力を持つ
入隊直後、対テネブラエ軍との交戦時、敵の基地に潜入し、重要な情報を持ち出す
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竹谷八左ヱ門
17歳
入隊02年目
陸軍諜報部隊所属

数多の動物を使役できる
入隊直後、対テネブラエ軍との交戦時、敵の基地に潜入し、重要な情報を持ち出す
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久々知兵助
17歳
入隊02年目
陸軍研究部隊所属

主に武器兵器の開発している

入隊直後、対テネブラエ軍との交戦時、前衛部隊に配布された新武器・DKRー058が敵の意表をつき戦況を有利にした
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尾浜勘右衛門
17歳
入隊02年目
陸軍研究部隊所属

心理状況の分析に長ける
入隊直後、対テネブラエ軍との交戦時、作戦部隊に助言した一言が大きく戦況を変えた
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「ほう」
「なかなか凄いじゃないですか」

いつも情報を集める側だから、逆に自分達のデータを見られるのは気恥ずかしい。三郎と雷蔵を見ると、ほんのり頬がそまっていた。「じゃあ、最後は我らが隊長だな」照れているのを誤魔化すようにそう言って、三郎が打つ。

「む、わしのか」

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伊達政宗
18歳
入隊03年目
陸軍司令部所属

若くして准尉になったやり手の実力者

昨年、対テネブラエ軍との交戦時、当時まだ一等兵ながらに周りの仲間たちへ的確な指示を出し、予想外の事態にもうろたえなかった
同年、同盟国フルメン共和国へ援軍として赴き、自軍の兵3000人を指揮した
本年、異例の准尉試験にストレート合格
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つづく

字数が危険になったので尻切れトンボ。

2011.11/10

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