1.双子、帽子を持って帰る

僕らはユクモ村のハンターだ。と言ってもまだランクは2に上がったばかりの新人だけど・・・・。今はとにかく、強力な武器と防具を作るために、比較的まだ安全な村長さんからのクエストを受けまくっている段階だ。今回の獲物はドスファンゴ。まさに猪突猛進、一直線に頭突きをかましてくる。

「うぉっとあぶねー!」

あれは、太刀使いの僕の兄貴こと冠葉。うまく突進仕切って止まったドスファンゴの後ろから、太刀で攻撃していたところ、方向転換したドスファンゴの牙が当たるところだったのだろう。僕は弓を引いて放った。兄貴がドスファンゴから距離をとるための、僅かな時間を稼ぐためだ。

「晶馬!あいつ足引きずってる、あと少しだ!」
「うん。あ、エリア移動した!」

ドスファンゴは僕らに尻を向けて、隣のエリアに移動する。慌てて追いかけると、隣のエリアにはファンゴがいて、体力回復のために眠るドスファンゴの周りを固めていた。

「よーし、晶馬やれ!」
「うん!」

弓矢を上に向け、少し溜めてから放つ。ファンゴが何頭か僕に向かって来ていたけれど、兄貴が全て仕留める。上に放った矢は狙い通り、眠るドスファンゴの上に何本も降り注ぐ。ビクッとドスファンゴが飛び起きたがもう遅い。素早くドスファンゴの目前まで迫った兄貴が、強烈な最後の一太刀を食らわせる。

「これでとどめだ!」

ザシュッ

ドスファンゴの狩猟に成功した。

とどめを刺したエリアにはちみつとアオキノコがあったので、兄貴が剥ぎ取っている間にそれらを採取。アオキノコは回復薬調合用にするとして、はちみつは使い道がいっぱいある。どうしよう。

「はちみつは虫取りの餌とグレード用にストックしとこうぜ」
「そうだね」

はちみつをジッと見つめていたもんだから、兄貴に心を読まれた。

「あれ、1号と2号は?」
「そういやあいつらどこに・・・・あ、いた」

狩りの最中にはなかなかの活躍をみせてくれる僕らのオトモたちは、蜂の巣をつついて蜂に刺されていた。間抜けなやつら。

「あーあ、あいつらの防具も作ってやんないとな」
「そ、そうだね」

村長に討ち取ったドスファンゴを引き渡し、報酬を受けとる。報酬はお金だけではなく、狩ったモンスターの素材なども入る。

「やっぱ下位じゃこんなもんか」
「兄貴、血生臭い」
「仕方ねぇだろ、間近で太刀振ってんだからよ。お前だって泥まみれだ」
「隠れて近づいたりするからね、どうする?温泉入ってく?」
「そうだな、陽毬に臭いとか言われたくねぇし」

ユクモ村は温泉で有名な観光地でもある。最近はなんだかお客さんが減っているみたいだが、一番凄かったときは、温泉目当てのお客さんで村中人だらけになっていた。

「ふぃ〜、いい湯だなあ」
「兄貴、親父っぽい」
「はっ!親父上等!酒でもありゃあ完璧だな」
「もう・・・・」

帰る途中の道すがら、もらったばかりの報酬で夕飯の材料を買って帰る。生肉がまだたくさん家にあったので、それと野菜と一緒に煮込んでしまおう。はやく食べてしまわないと折角のお肉がダメになってしまう。

「冠葉、クリーム煮とトマト煮どっちがいい?」
「トマトだな」
「了解」

トマトはまだ家にあったな。ホウレン草とジャガイモと・・・・と、僕が食材を選んでいると、兄貴が袖をつついてきた。

「何?」
「これ、陽毬に被せたら可愛くね?」
「うわぁ、いい!絶対可愛いよ!」
「だろ!」

兄貴が持ってきたのは変わった帽子。紺色で、ペンギンのような嘴のついたものだった。しかし、ここは食材を売っている商店である。

「それどこのお店のやつ?」
「知らねぇ、こいつらが持ってきた」

こいつら、もとい僕らの相棒である1号と2号は、アイルーなのに何故か言葉が話せない。知能が低いのかと思えば、やっていることは他のアイルーとかわらないし、僕らの話すことも理解しているようなので、決して馬鹿ではないらしい・・・・間抜けだけれども。

「これどこから持ってきたの?」

しゃがみ目線をあわせて問う。
身振り手振りとネコらしかぬ「キュッ」とか「ギュッ」とかいう鳴き声から察するに・・・・。

「拾ってきた?」
「そこの道でか・・・・」

落とし物は村の役所に届けるべきか。

「まぁいっか、持って帰ろうぜ」
「えぇ?いいの・・・・?」
「いいよいいよ、陽毬にあげちまおう」

僕はなんだかいまいちいいような気がしなかったが、これ以上兄貴に何か言うのも面倒だったので口を閉じた。この帽子を持って帰ったことにより、僕らの運命が180度も変わるとは思わずに・・・・

つづく


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