4.双子、仲間と狩りへ行く

「ど、どちらさまですか?」

晶馬の声が困惑気味に響いた。陽毬の姿をした知らない女(多分)は、あごでクイッと中を示し、スタスタと奥へ消える。とりあえず入れと言うことなのか。俺たちが居間へ行くと、すでに座っていたそいつが口を開いた。

「わらわは貴様たちの妹の体を借りている」
「は?」
「わらわはいまこの娘が被っている帽子自身だ。貴様らにわかるように言うとしたら、つまり帽子の妖精さんと言ったところか」

妖精さんと可愛く言っているが、要はつまりわけのわからない不可思議な霊が陽毬に取り付いていると言うことじゃないか。ふん、とふんぞりかえり、その女は晶馬を指差した。

「おい、そこの下僕」
「下僕!?」
「この娘曰く、貴様の手料理は最高にうまいとか・・・・作れ」

突然何を言うのかと思えば・・・・晶馬も困惑している。体は陽毬なのに陽毬じゃない。自身を帽子の妖精さんと言う謎の女。それがいきなり飯を作れだの・・・・

「兄貴・・・・」

どうしよう、と目で問われる。

「飯を食わせたら、陽毬から出ていくのか?」
「出ていくも何も、借りているだけで取り付いているわけではない。貴様らの妹も了承している」
「陽毬が?」

晶馬と顔を見合わせた。この偉そうな自称妖精さんをどうしてくれようか。いつまでも動こうとしない俺たちにうんざりしたのか、女(多分)はイライラとため息をついた。

「はぁ・・・・いいからつべこべ言わずに飯を作りやがれ」

女(多分)は、その場にあったクッションを投げつけた。

次の日

洋介との約束を果たすべく、集会所に向かう。あの女(多分)は、晶馬のメシをたらふく食うと、「なかなかうまかった」と言い残して消えた。消えたというか、陽毬に体を返したと言うべきだろうか。女(多分)のことを陽毬に問いただしたが、「友達に体を貸しただけ」の一点張りで、それ以上の事は何も言おうとしなかった。

「弟ーっ!」

大声が聞こえたと思ったら、隣を歩いていた晶馬に誰かが飛び付いた。言わずもがな洋介である。

「やぁ双子!来てくれてありがとう!」
「ちょ、っと・・・・苦し」
「いやー、二人が一緒に狩ってくれるなら百人力だよー!」
「は・な・せー!」
「ボルボロスの弱点は泥の鎧が有るか無いかでかわるぞ!」
「知ってるっつーの!」
「硬い体に気を付けろ!すぐ刃こぼれするから砥石をいっぱい用意しないとな!」
「僕は弓使いだから関係ないし!」
「遊んでるなら先に行くぞー」
「「待って!」」

受け付けに行く前に温泉で体力をつけ、ボコボコーラを飲んで攻撃力を僅かに上げておく。

「苹果さん、ボルボロス狩りの受け付けお願いします」
「契約者は俺で、メンバー募集二人」
「で、その募集メンバーだが俺と晶馬がサポートにつく」
「了解、えっと契約者が洋介さんでサポートメンバーが晶馬くんと冠葉くんね」
「どもーっす」

狩り場は砂漠だ。ボルボロスの出現ポイントには入っていないが、奥のエリアはクーラードリンクを飲まなければ干上がってしまうほど暑い。俺たちは、ベースキャンプで支給品を受け取って捜索を始めた。モンスターの習性なのか、だいたいいる位置は決まっているので探すのに苦労はしないだろう。案の定、泥の沼に浸かっているボルボロスを見つけた。

「じゃあ、作戦はいつもの感じで」
「うん」
「オッケー」

俺と洋介が沼の近くの茂みに隠れる。隠れた事を確認して晶馬が弓を構えた。ヒュッと晶馬の放った一本の矢がボルボロスの体を掠める。それに反応したところにやつの背後から二人で斬りかかる。泥の鎧が少し剥がれ皮膚が出た。そこに、晶馬が二本目の矢を射る。ぐさりと刺さったそれにボルボロスが暴れるが、その腹の下に潜った洋介がすかさず乱舞。鬼神モードに入った双剣使いは、攻撃力だけみれば最高だ。防御できないところがたまにきずだが。俺はその隙に、ペイントボールを投げつけた。

つづく

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