お山の悲劇

オリキャラ注意


○お山の悲劇


「伊作っ、伊作ー!」





文次郎たちが担ぎ込んだ子供たちは、伊作の治療を受けた後、滝夜叉丸らの隣室に寝かされている。軽い火傷はあるものの、命に関わるような大怪我はしていなかった。

「この水気・・・・蛟か?」
「蛟がなぜこの子たちに加護を?」
「何にせよその加護のお陰で、こいつらは焼け死ななかったわけだ」





火事から丸一日経って、一人の子供が目を覚ました。

「よう。お前、俺たちが見えるか?」

その時そばにいたのは文次郎と仙蔵、伊作、三木ヱ門、喜八郎の五人。まず文次郎が、あやかしや神を見る力があるかを確かめる。子供はまっすぐに文次郎を見据えて応えた。

「・・・・おじさん誰?」
「「「「ぶっ!」」」」
「おじさんとは失礼な!見た目年齢はこれでも十五だ!」

周りが笑い崩れる中、子供はポカーンとしている。

「お前、それで十五のつもりだったのかっ、ははっ・・・・これは傑作だ!」
「仙蔵、だ、だめだよ。文次郎に悪いよ・・・・ふふふっ」
「くくっ、すみません。三十は越えているものだとばかり・・・・」
「〜〜〜〜っ!」
「お前らなぁ!喜八郎もどうせ笑うなら声殺してないでいっそ大声で笑ってくれ!その方がマシだ!」

あはははは、と笑い声を聞き付けて小平太と滝夜叉丸がやってきた。

「何々どうした?」
「小平太聞け。この子供がな・・・・」
「仙蔵!わざわざ広げなくてもいいだろう!」

一頻り笑い転げて落ち着いた頃、漸く伊作が子供に問いかける。

「えっと、君の名前を教えてもらっていいかな?」
「さもん」
「さもん?」
「うん、ハクセキのおじさんが、お前の名前は神崎左門だって」
「ハク、セキ?」
「キラキラ光るお姉さんが、おじさんのことハクセキイノシシって呼んでた」
「白皙猪か!?」

白皙猪は神の使いである。見た目は白い大猪で、荒ぶる神の心を表している赤く鋭い目が特徴だ。左門の話はこうだ。物心ついた頃には、すでに白皙猪が側にいて山で一緒に暮らしていた。光る女性は、白皙猪の上司のようで、毎年春には山から里に降り、秋に戻ってくる。そんなある時、もう一人の子供が山へやってきた。

「数馬はね、イケニエなんだって」
「生け贄?」
「そう。山の神様へのイケニエ。だから死ななきゃいけなかったらしい。だけどお姉さんが必要ないって言って結局死ななくてよくなったから、数馬と僕はトモダチになったんだ」
「そうなんだ。ねぇ、そのお姉さんはおじさんに何て呼ばれていたの?」
「山神さま」

陰陽師見習いたちは息をのみ、その場にいた天将たちはやはり、と思った。山の神は田の神でもある。春に山から降りてきた山の神が田の神となり、秋に再び山へ帰るのは有名な話だ。左門の話とぴったり合う。

「もう一つ聞くけど、君の友達に、蛇のような子はいないかな?」
「いるよ。孫兵」
「孫兵?どっかで聞いた名だな」
「私知ってるぞ!八左ヱ門になついている蛟の子だ!」
「あー、そういやいたな」
「おじさんたちは孫兵の知り合いなのか?」
「おじさん言うな!」
「知り合いの知り合いという程度だがな」
「へー」

自分の友人を少しでも知っている人がいることに安心したのか、左門はここへきて初めて笑った。

「左門、最後の質問だよ」
「何?」
「どうして君と数馬は、賭博場の物置の中にいたのかな?」
「・・・・捕まったんだ」
「捕まった?」
「悪い人に。あの人たちおじさんを殺したんだ。お姉さんの大切なもの盗っておじさん殺したんだ!」
「っ!」
「だから僕たちで取り返すの。悪い人たちはトバクジョーにいるって言うから探して・・・・作兵衛や藤内にも手伝ってもらったけど、危ないからトバクジョーは僕と数馬だけ入った」
「そしたら、捕まっちゃったの?」
「うん・・・・」

山神の私物や神の使いの命を奪うなど人の所業ではない。

「ちなみに、その作兵衛と藤内って言うのは?」
「町の子」
「ありがとう。左門、お腹空いたでしょう?いま何か持って来るからね」

左門の頭を撫でて、天将たちは部屋を出ていった。


つづく

左門がおま誰状態wwwww
おかしなところが多々ありますが目をつぶっ(ry

2012.5/26

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