出逢い
○出逢い
「まだ若いな」
陣から一番始めに出てきた、朱色の衣を纏った切れ目の青年が口を開いた。驚いて声の出ない喜八郎たちをマジマジと見つめる。
「おい朱雀、可哀想に怯えてるじゃないか」
斜め後にいた金色の衣の青年が彼の肩を叩いた。
「何を言う勾陳、殺気溢れるお前や強面の青龍はともかく、私の美顔を見て怯えるなど」
「青龍のバカなんかと一緒にするな!」
「何を!俺こそ貴様のようなアホと一緒にされたくないな!」
「何だとテメェ!」
「やんのかゴラ!」
青龍と呼ばれた目の下に隈を作った男と、勾陳と呼ばれた男が口喧嘩を始める。すると、今度はまた別の者が前に出た。
「二人ともやめなさい!彼らが困っているでしょう」
その者は喧嘩を始めた二人にそう怒鳴ると、喜八郎ら三人の方を向いて微笑んだ。
「突然ごめんね。僕は天后、十二天将の水神です」
「え!?」
「あ、はい・・・・」
「ご丁寧にどうも」
「いまの三人は順に朱雀、勾陳、青龍。ほら、他のみんなもちゃんと自己紹介してあげて」
「こいつらが私たちを呼び出したのにわざわざ自己紹介すんの?」
「騰蛇」
「・・・・はーい」
天后に促されて、赤黒い衣の青年がまず一歩踏み出した。
「私は騰蛇。まぁこうして呼び出されたわけだし、とりあえずいけいけどんどんでお前たちの役に立ってやろう!次は大裳な」
「もそもそもそ」
騰蛇に腕を引かれて、顔に傷のある男が三人の前に出る。何やら話しているが、声が小さくて聞こえない。
「あの、すみません。何とおっしゃられたのでしょうか?」
恐る恐る滝夜叉丸が尋ねると、慌ててまた別の青年が彼の横に並んだ。
「ごめんごめん、大裳さんはあまり大きな声が出せないんだ。僕が通訳するね」
「もそもそ」
「私は大裳」
「もそもそもそ」
「土神ですよろしく。ちなみに僕は白虎です」
「そして私は天空!白虎在るところに天空在りさ」
ぬっと白虎の横から同じ顔が飛び出した。
「ちょっと天空自重」
「うるせぇ大陰。このうどん頭」
「うどんばかにすんな!あ、俺は大陰っていいます。結構頭いいんだよ」
「そうなんですか・・・・」
「あ、頭いいと言えばこいつも」
ビッと大陰が指差した先には黒い衣の男が一人。指を差されたことに眉をひそめていた。
「俺は玄武」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
彼はそれだけ言うと黙り、隣に立つ者にそれだけかよ!と突っ込まれた。
「あ、えっとこいつ人見知りでさ。悪いやつじゃないんだ」
「俺の弁明してないで早く名乗れよ」
ぼさぼさ髪のその者を、玄武がせっつく。
「そうだった!俺は六合、木神の六合だ!よろしくな」
「はい・・・・よ、よろしくお願いします」
「そんで貴人さん」
「はーい」
そして、六合が手で指し示した先には金色の髪を靡かせた者がいた。十二人目である。
「ボクは貴人、いちおー十二天将の主神です」
名乗られたものは全て、六壬神課に用いられる十二天将の名前だった。滝夜叉丸たちは正真正銘の神を召喚してしまったのである。戸惑う三人を尻目に、再び朱雀が言葉を発した。
「さて、我々は彼らに呼び出されたわけだが、当の本人たちは困惑しているな。どうする?」
「まさか自分達が十二柱とも召喚できるとは思っていなかったのか?」
「でも僕たちを全員そろって召喚したのは彼らで三人目、いや三人合わせて五人目?」
「白虎、三組目でいいんじゃないかな」
「さすが天空!つまりすごいことだよね!」
「で、どうすんだよ」
「バカ野郎、呼び出されたんだからしばらく仕えるに決まってんだろうが」
「アホにバカとは言われたくないな!」
「もう二人ともやめなさいってば!」
未だにどうしていいのか分からない滝夜叉丸たちが唖然としている内に、十二柱の神々は自分達の行く末を話し合っている。
「貴人、一応お前が我々の頭だからな。お前が決めろ」
「ん〜、ボクはこの子たちとしばらく一緒にいたいかなぁ」
「ふむ」
「あ、あの・・・・」
「と言うわけだ。よろしく頼むぞ。陰陽師の少年たちよ」
「え?」
「あ・・・・」
「はい」
少年たちに、拒否権はないらしい。
おわり
最後が決まらない
朱雀=仙蔵
勾陳=留三郎
青龍=文次郎
天后=伊作
騰蛇=小平太
大裳=長次
白虎=雷蔵
天空=三郎
大陰=勘右衛門
玄武=兵助
六合=八左ヱ門
貴人=タカ丸
(以上登場順)
わかりにくいので次からは名前呼びになります。
2012.5/18
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