新しい明日



新しい年が来る、今日は今年最後の日、12月31日だ。

コウタはいつも以上に騒がしくアリサもまたいつもより表情が明るい。
リンドウは「今年最後の」と言っていつものように配給ビールを飲み、サクヤはそんな光景を微笑ましそうに見ていた。
ソーマもまた、いつもより穏やかな表情でこの場にいた。

「・・ゴホン。いやあ、皆さん。今年もまたアラガミだらけの年でしたが・・」

リンドウはソファから急に立ち上がると赤らませた顔で言った。

「ここはぶっちゃけ話でも!」

何が面白いのか大声で笑うリンドウは完全に酔っぱらっている。
どうやら、今日の集まりは年越しと忘年会をかねているらしかった。
任務後強制的にここに連れられた俺は今一なんなのか把握していない。
忘年会、年越し、どっちも俺にとっては初めての体験で明日のためにこんなにも騒ぐのは変な感じだ。

「ぶっちゃけ話・・んーと・・、やっぱりノゾミが可愛すぎることとか?」
「それ、どこがぶっちゃけ話なんですか。もう聞き飽きてますよ」

コウタが端末機でいつものように妹の写真を見せようといじっているのをアリサは呆れた顔で言った。

「私のぶっちゃけ話はトウと初対面の時、なんて怖そうな人だろうと思ったことですね」

コウタの妹自慢を無視しアリサは俺をチラリと見て言った。

「あ、もちろん、今は違いますよ?」

アリサは慌てて訂正をするが周りの奴らは何回も頷いている。

「お前、会った瞬間に先輩面してきたじゃねえか」

特にわざとらしくうなずいていたコウタに言うと「違う!」とコウタは立ち上がり妹の写真が写った端末機を掲げて言った。

「あれはなー。ワザとだったんだよ、ワザと!ああゆう話しかけ方しないと怖くてー・・てかさ?それよりも見てよ!これこの前家族で誕生日パーティーした時の写真なんだけど・・」

リンドウのが移ったのか酒を飲んでいないはずなのにテンションが見事な酔っぱらいのコウタ
俺は机の上に乗る料理を指で摘む、うめえ。

こうやって集まるときは大体何かしら料理が準備してあるがそれは大体サクヤやソーマが作ったものだ。
2人とも料理がうまく、簡単なものしか作らない俺は少し尊敬してしまう。
こーゆうのってとにかくぶっこめば良いって問題じゃねんだよなあ・・
一体この料理たちを作るのにどれだけ手間と時間をかけてるんだか

「コレ、ソーマか?」

指についているタレを舐めとり隣に座るソーマに話しかける。

「・・ん、ああ。・・・何か変な味でもしたか」
「いや、うめえよ」
「・・そうか」

また料理をつまむ、うめえ
なかなか手が止まらなくフォークがないかと見渡すが見当たらない。

「こんな手の込んだもん、作るの大変じゃねーの」
「・・別に、いつも作ってるわけじゃないしな」
「いつも作ってねーなら逆にもっと苦労すんだろうがよ」
「・・・」

「ふふ、今のあなたみたいに食べてくれる人がいるから作るのよ」

無言のソーマの代わりに答えるかのようにサクヤは微笑んで言った。

「ご苦労なことで」
「全くよ、でも、おいしいって食べてくれる人がいれば苦労なんて飛んでいっちゃうわ」

サクヤは俺にフォークと取り皿を差し出してきて受け取る。

「ねえ?ソーマ」
「・・さあな」
「おーい、サクヤ!ビールが足りないぞー!」
「もー、リンドウ飲みすぎよ」

サクヤは苦笑いをしながらこの場を去った。
アリサがコウタの妹自慢の話に付き合ってる様子が目に入った、さっきはあんなこと言ってたくせが毎回付き合ってるのはアリサなような気がした。
まあ、そのアリサの症状は少し疲れているが

「ソーマ。俺の第一印象はなんだった?」

料理を取り皿に取り、また食べる
うまい、一人で全部食べ切ってしまいそうだ

「・・そんなもん覚えてねえ」
「ほんとかよ」

嘘くせえなあ、俺はちゃんと覚えてるってのに

「トウは覚えてるのか」
「さーな」

初めて見たソーマの瞳と髪は今でも見るたびに同じことを思う
柔らかそうでサラサラとしていそうな髪は相変わらず触れていなく、きれいなソーマの瞳に俺が写るのもなんだか恥ずかしい。
いつか、触りたい、と毎回思いつつもそれはいつも、いつか、で終わってしまう


「あと一分だぞ!」

両手を上げリンドウは「うおおお!」と叫ぶとコウタも並んで同じように叫んだ。
アリサとサクヤは一緒に残り60秒のカウントダウンを始める。


「・・慣れねーな」

ジュースの入ったコップの飲み口を口元にあて小さく小さく呟く。
こーゆう暖かい場所はいつもくすぐったい、むず痒い、そして違和感
まあ、その違和感は無理やり隅へ追いやってしまうけど

新しい年になる、今年が終わる

そんなことを意識するのも今日が初めてだ。



「眩しい男」

飲み口を口元にあてたままボーとしていると隣から声が聞こえた。
横目でソーマを見る、ソーマもまた横目でこちらを見ていた。


「透き通ったきれいな目、柔らかそうな髪」

俺も答えジュースを一口飲む
コップを机に置きソーマを見るとやつは目を見開いていた。
俺だってなんともなさそうな顔をしているが心底驚いている。
眩しいだって?この俺が、

「3!」

まあ、多分、金髪で目も橙であるし

「2!」

見た目からそう見えたんだ、何も変に気にすることじゃあない

「1!」

まあ、でも、なんつーか

「0!」

恥ずかしい。


「おめでとー!」

今年が今年になったことにより場は一気に盛り上がりを見せる。
サクヤとアリサも立ち上がり俺とソーマはコウタとリンドウによって立ち上がらせられた。

「では、皆さん、今年もまたこうやって全員そろって年を越せるようにがんばりましょうや」

リンドウはビールを手にし俺たちはジュースの入ったコップを手にして上へと上げる。

「はい!今年もよろしくー!」
「よろしく!ことよろー!」
「よろしくね」
「よろしくお願いします」
「はいはい、どーも」
「・・よろしく」
「トウ、ちゃんとよろしくしろよー」
「んだよ・・よろしく」

他の奴らのコップと缶が俺のコップに当たりコツンコツンと音を立てる。

新年、今年の始まり
始まったといっても去年と変わらず生きるために神と戦うことは変わらないだろうが、

まあ、よろしく。








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