足掛け3年 高校行っても、新しいチームで頑張って下さい、とか。ずっと応援してます、とか。 普通なら憧れの先輩が中学を卒業する時に言えることなんだけど。それを口にすることは出来なくて。 なんでかって、ここは鎌学だから。 鎌学中等部を卒業したら、大抵はそのまま高等部に行く。敷地は隣。俺の好きな人もそのまま高等部に持ち上がり。 これでそんなしんみりしたこと言ったら笑われる。だって一年経ったら自分も高等部に行くんだし。 だから、そう、一年我慢すればまた一緒のチームでやれるから。だから言わない。 好きだけど、入学してからずっと好きだったけど、言えなくて、言えるわけなくて。 でも同じチームでやれるからそれだけで良いや、って自分を納得させて、ここまで来て。 (それじゃ、あと三年経ったら?) 冷静な部分、のようでいてきっと一番感情的なところが囁く。あくまで告白させようとする意思が。 今回は中等部を卒業するだけだから、一年経てば確実に会えるけど。高等部を卒業したら、その後の進路はそれぞれになる。 あの人がプロを目指すのか、サッカーは高校までで普通に大学に行って普通に就職するのか、高校を出てすぐに働くのか、分からない。 まだあの人自身決めてないことかもしれない。 だから、あの人が高等部を卒業する時には、少なくともそれまでには、言えないと前に進めない、けど。 (……多分、付き合うとか、出来ない人だろうしなぁ) どう考えたって向いてない。あの人は――国松さんは、いつだって目の前のことに全力な、不器用な人だから。 その前に男同士だって時点で色々と問題だけど。つまり完全に見込みはない。 だから、せめて後輩として傍に居られるだけで満足すべきだ。 そう決めて、部室のロッカーに最後の荷物を引き取りに来たのだろう後ろ姿を呼び止める。 「あの、国松さんっ」 「お!? よー祐介、探してたんだよ! お前教室にも居ねぇから、きっとこっちだろうと思ったぜ」 「あれ、じゃあ行き違いだったんですね。すみません、えぇと、何の用で?」 なんとなく出鼻を挫かれた気がしないでもないけど。 用があるというなら聞いてから、後は無難に「とうとう鷹匠さんと同じチームですね」って笑って、高等部まで荷物半分手伝って。 それで良いかな、なんて思っていたら。 「あー、その……お前と一緒にやった二年間、楽しかったから、早く高等部上がって来いよ。 ……や、あと一年待てばいいんだろうけど、やっぱお前居るのと居ないのとじゃ感覚違うし。 傑みたいに高等部に混ざってプリンス出ることも出来るんだしよ。その、待ってっからな!」 「は、はい……え、あの、国松さん?」 「何だ?」 頭の上の、ぽすぽすしてる手はなんですか? その、少し赤い顔は、気のせいですか? --- 気のせいということになって結局高校まで持ち越すと良いよ(・∀・)国祐だもの せらの。 12.02.25 祐介誕 加築せらの 拝 top * 他校 |