Cat's Eye


 朝から、晴れたり曇ったり、忙しい空模様。

「鬱陶しい天気だな」
「そうか? 曇るだけで雨は降らないから、むしろ好きだけどなこういう空。よく晴れてると逆光になった時、ボール見失うし……猫の目の空、って言うんだったかな」
「それもそうか――あん? なんだそりゃ」

 飛鳥の言うことにも一理ある、と思ったら何か最後、よく分からない言葉が混ざったような。

「くるくる、猫の目のように変わる空のことだ。英語圏の呼び方だったと思うが」
「ほー。さすが葉蔭生」
「何がどう『さすが』なんだそれは」
「勉強してる奴は違うな、ってことだ。中等部三年間で普通の高校の一年生までの勉強終わるだろお前ら」

 俺だって鎌学には居るが、中等部から入学したわけじゃないから、勉強に関してはごく普通だ。進級に影響するほど悪いワケじゃねーが、平均より良いワケでもねぇ。
 どう考えたって飛鳥の方が勉強できるし、努力もしてる。だから『勉強できる奴』じゃなくて『勉強してる奴』。敢えてそう呼んだ意味が分かる程度には、飛鳥は物分かりが良い。

「タカは勉強はしないけど頭良いからな、俺はお前が羨ましいけど」
「良くねぇぞ、少なくともお前よりは」
「まさか。頭が悪かったら戦術眼は身に付かないさ、見てるものの意味が理解出来ないんだから。タカはそうじゃないだろ?」

 そりゃこなしてきた試合のレベルの問題じゃねーのか、なんて咄嗟に思ったが。そう言えば傑も似たようなことは言ってた気がする。
 技術のレベルが同じなら、最後に試合を分けるのはオツムの違いだとか。閃きって奴は天才に降ってくるんじゃなくて、自分で考えて選んで積み上げた経験の中から湧き出してくるんだとか。要約するとそんな事だったと思う。

「ま、褒めてくれんなら受け取っとくぜ。そういう意味での頭の良さなら、俺ァまだまだ敵わねぇ奴がいるけどな」
「あぁ、俺もだ」
「……分かってて言ってやがったな?」
「八割方な」
「ヤな奴」
「照れるよ」
「褒めてねぇ!」

 並んでるのをいいことに額へ裏拳食らわせようと思ったが読まれていた。気にくわねぇ。

「チ、お前こそ『猫の目』だろ」
「どの辺がだ? 気まぐれな自覚は無いんだが」
「そっちの意味じゃねぇ。褒めてんのか褒めてないのか分かり辛い。そのクセ馬鹿にはしねぇ。但しお前に手放しで褒められたらそれはそれでなんか落ちつかねぇ」
「はは、初めて云われた。俺にそんなこと言うの、タカくらいだからかもしれないけど」
「はっ、俺以外に居たら困る」

 売り言葉に買い言葉で返してから、実は今すごく恥ずかしいこと言ったなと気付いたけど、気付かなかったことにした。……出来れば飛鳥も気付いてないと良い。
 十中八九叶わないだろう願いを胸中に、ダウンのストレッチを終えて立ち上がった。


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猫の日に寄せて。きぃちゃんリクエストの鷹飛。ややリリカルほも。
最初はストレッチしながらにゃんにゃんしてる話になりかけた。
死ぬ気で修正したらこうなった(・∀・)^

12.02.24 加築せらの 拝

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