カナリア動乱 第二話

 話は遡って二日前。

「王子、大丈夫ですか? 窮屈ではありませんか?」
「ここでは『レオ』ダヨ、ユウスケ。その呼び名はしばらくお預けダ」
「……そうでしたね」

 トウシュウ王国行き、エアリンクス航空181便。その一角に彼らは居た。
 不穏を感じた王の示唆で離宮から抜け出し、サングラスで目元とを隠したレオことレオナルド王太子一行。付き添うのは三名。
 レオの乳兄弟であるショウタ・バンドウ。幼い頃からレオの専属執事として育てられたユウスケ・サエキ。そして三人のお目付係であるパトリック・ジェンパ卿。

 褐色の肌が二人とペイルオレンジの肌が二人、いずれも二十代後半から三十代前半のスーツ姿。この取り合わせならばビジネスに見えるだろう、と提案したのはユウスケだ。但し座っているのはエコノミー席の上、変装を提案した本人がまだ「王子」と呼んでしまったが。
 急ぎの国外脱出に際して、一日一便しかないとは言え定期便があるトウシュウへの当日席がまだ空いていたのは有り難かった。

「ともかく、エコノミーでも取れただけいいサ。サー・ユキムラとも連絡が取れたし、万々歳ダヨ?」
「そうそう、どうせなら良かったコトを考えようねユウスケ!」
「ショウタ、声が大きいヨ?」

 しぃ、とウィンクするジェンパ卿に「はぁい」と大人しくするショウタが二十八歳だと言っても誰も信じまい。

 兎にも角にも、レオナルドの云う通り、トウシュウの幸村官房長官とすぐに連絡が付いたのは何よりの僥倖と言うほかない。
 むしろ難民弁務官事務局から外務省に引き抜かれ十数年、その経験を買われて外務大臣を歴任した幸村が官房長官になっていたこと自体がこの上ない幸いと言ってよかった。

 共に立憲王政の国であるリンドウ王国とトウシュウ王国は、外務大臣や外務省の実務者レベルによる外交のほかに王室外交を併せ持つ。
 その際、国王であったスグルだけでなく王太子としてレオナルドも同伴していたために、外務大臣時代の幸村と一行は面識があった。
 難民に携わる仕事出身のため『人道と外交の両立を』を掲げていた幸村が、軍事クーデターから亡命してきた互恵国の王室を保護しないわけがない、というレオナルドの一言でホットラインに打電し、すぐさま保護を了承する旨の返事が来たのだ。

 首相が国内に不在の際、重要な決断を負うために官房長官は任期中、決して国外へ出られない。ゆえに確実に連絡が取れることもユウスケが知っていた故の決断だった。

「なんにせよ、当分はここよりもっと窮屈な生活になるんだからネ。我慢ダヨ、皆」
「はい、おう……レオ」
「うん。敬語も禁止ー」
「それは勘弁して下さい……」



to be continued...

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二話目と言いつつ既に時系列が崩壊してるね!
いいんだ、書きたいとこだけ書くから順不同なんだ…^p^


12.02.01 加築せらの

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