18歳の君へ

「誕生日おめでとうございます、荒木さん」
「おう、ありがとな駆」

 頭の上から声が響く。頬に感じるのは駆の鼓動。しとり、つむじに口付けられたのが分かった。
 入学してきた頃よりマシになったとは言え、まだまだ俺より細い身体。
 そのどこにこんだけの力が、と驚くほど強い腕に引き寄せられたのが五分前。
 練習の後だし疲れてるし少し高めの体温は心地良いはずだが、耳の傍で感じる鼓動にまんじりともせず、ただ駆の言葉を待ったのが最前までのこと。
 不意の抱擁に珍しさを感じて、理由を真剣に考えたら思い当たったのが自分の誕生日で、だから貰った言葉に驚きこそしなかったけど。

「……一番最初に言いたかった、ってヤツか?」
「はい。何人か、零時零分きっかりにメールを送ってきそうな人もいますから。荒木さんが携帯を手に取れないように、ホールドさせて貰いました」
「お前にもそんな独占欲あったんだなぁ……足掛け三年の付き合いになったのに、全然知らなかったぜ」
「滅多なことじゃ教えませんよ。荒木さんは束縛されるの嫌いみたいだし。……けど去年の誕生日は、直前でかかってきた電話に貴方をとられて悔しかったので」

 今年は先手を打たせて貰いました、と笑う気配がする。どんな顔で笑ってるんだろうか。
 俺の知らない策士の駆、実は独占欲の強い駆。
 近付いてる自分の卒業にコイツを置いていかなきゃいけない不安と心許なさを感じてたけど、この分なら心配いらない、だろうか。
 こんなに執着を見せてくれるなら、きっと俺の後を追いかけて海外でもどこでも、来てくれる。そんな気がした。



Fin.



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荒木誕生日耐久お祝い企画第4弾。
荒木が2年の選手権予選辺りから付き合ってたらしい。18歳の荒木へ。


12.01.15 加築せらの 拝

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